水商売2つ
ttp://store.yahoo.co.jp/eternity/a5caa5cea53.html
世界初!ナノクラスターミネラルウォーターと純度100%の有機ゲルマニウムの融合でできています。有機ゲルマニウムが600mgという高含有で、体内の汚れた体水を羊水に変える奇跡の水です。
ヤフーショッピングはこういうの多いよね。来るもの拒まずだからかな。
有機ゲルマニウム化合物*1の定義とか、シラスとシトラスの取り間違えうんぬんはいずれとして、ツッコミどころが多すぎる。
冷静にツッコむと
- 普通の水分子のサイズはオングストローム単位なので、ナノスケールのひとつサイズが下。小さいのがいいのなら、クラスターより普通の水のほうがいいに決まっている。普通の水が 0.1ミクロンサイズのクラスター構造を取っているという論拠がまるでわからない。バルクの純水の水素結合ネットワークの構造は、ものすごく速くぐちゃぐちゃになることがすでにわかっている。そういう実験結果はまったくこの説明を支持していない。
- 有機ゲルマニウムってどういう構造?そのありえないぐらい高濃度の分析値は信用できるのか?
- ゲルマニウム依存のクラスターサイズ変化を示していない。
- 体のトラブルの原因と体内水のクラスターサイズの相関の根拠がわからない。
という疑問が出るのは当然。
まあ、薬事法には引っかかってないので、目くじら立てることではないのかもしれない。勝手に読み間違えた人が悪いということか。
有機金属化合物を扱っている立場のオレとしては、「有機ゲルマニウム」が、どういう部分構造をしていて、その中にどのくらいの濃度のゲルマニウムが含まれているのかを、信用するに足る分析データで示して頂きたい。
「有機」ってうたってるんだから、有機か無機かの区別はついているんでしょう?
ホントにそんなに入っているのなら、ゲルマニウムの抽出をやった方が儲かるんじゃないかと。ゲルマニウムって元素はなかなか濃縮されないんだから。
フミン酸*2の一部にゲルマニウムがアルコキシドの形で挟まってるってんじゃないでしょうね?
500 ml \6300 。水商売だなあ。
こんなことを書いていると商売人ににらまれるらしく、明らかに特定の人がそのネタを見にこの日記に定期的にアクセスしている。商売の邪魔なんだろうね。
これなんか、もっとすごいぞ。水素を水に溶かし込んでいる。
ttp://www.water-factory.com/h4o/
H4O という名前がすごい。混成軌道をまったく考えていないモデルも。
これらの天然水は、長い時間をかけて鉄鉱石やマグネシウム*3など酸素と結びつきやすい物質を豊富に含んだ地層を通って湧き出てくるため、「水分子から酸素が引き剥がされ、取り残された水素がそのまま水に溶存し、酸化還元電位の低い(マイナスの)水になった」と考えられています。
ここら辺がすてき。間違ったことは書いてないのだろう。
Q3. 水素はどれくらい入っているのですか?
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A3. 1886ppb(1,886ppm)で、水道水の約10万倍です。東亜ディーケーケー社製DH-35Aにより計測値。この計測器は東京大学、京都大学、九州大学で使用しているものと同じです。
使用者の声だけで、効能は一切うたっていない。これがポイント*4。
そして、商品名はあくまで商品名。
CPK モデルのような図も、商品名も、商品には一切関係ない。
でも、写真を見せられると、病人は藁にもすがる気持ちで買っちゃうんだよね。
(追記)引用が id:nuc さんから来ていたので、少し説明を書き足しておきます。
*1:有機金属化合物の定義はいくつかあるが、もっともよく通っているものは、「金属−炭素結合がある化合物」という定義。天然の状態ではゲルマニウムは酸素もしくは硫黄としか結合を作らないので、天然の有機ゲルマニウム化合物があったら当業界では大ニュースになるだろう。浅井ゲルマニウムがやっていたのも、酸素が配位しているので、「有機ゲルマニウム化合物」ではない
*2:humic acid。植物が微生物の作用により分解してできる高分子量の難分解性有機物。フミン酸の一部にゲルマニウムが結合しているなら、「純度100%の有機ゲルマニウム」「有機ゲルマニウム600mg」という宣伝とそれほど矛盾せず、ゲルマニウム濃度が 50 ppb っていう状況もあり得る。しかしそれは詭弁だし、水にも溶けないしまずくて飲めたもんじゃないだろう。
*3:確かに金属マグネシウムは水と穏やかに反応して水素を発生させるのだが、天然には金属マグネシウムは存在しない。水素分子が天然にもけっこうあるのは確か。
*4:効くって書いたら薬事法違反で捕まっちゃう。体験者の感謝の言葉はそれには当てはまらない。だからやり方としては、なんとなく体によさそうというほのめかしの次に、体験者の「メチャクチャ効きました」という説明が多数引用される。常套。