巷では「母の日」だという。が、オレにはそんなものは関係ない。
オヤジとオフクロを連れて紫水晶を掘りに行く。
三人で山に行くのは久しぶりだ。
朝起き、まずは飯を食べて、しばらく運転し、高速に乗る。
目的が「紫水晶」でなければもうちょっと近いところもあるんだけどね。
紫水晶はオヤジのリクエストだから。
高速を下り、地元の知人宅に向かう。
一番農作業が忙しい時期なのでいないかと思ったが、風邪で伏せっていた。
とりあえず挨拶だけする。
鉱山跡に向かう。
車を適当なところに止め、ガッツリ上がる。
オヤジはひざがつらそうだ。手術したばかりの両膝にはこの傾斜はきつすぎたか。
オフクロは途中で花の写真を撮りに行くため、別行動。
我々の目的は、膨縮の激しい紫水晶脈が20m近く続く金銀銅鉛亜鉛を含む脈。
とりあえずスパッとガマを開けてみせる。
ここはとにかく露頭にガマがよく開く。小さい水晶しか入っていないんだけど。
紫水晶はきれいなものも出てくる。
でもやっぱり小さい。
オヤジとは15年近く一緒に山に行ってないのだが、いつの間にか体重移動はオレの方がはるかにうまくなったな。
けが人と比較しちゃいけないか。
オヤジは、初めて開ける紫水晶のガマによろこんだようだった。
しかし、脈ガマってのは、ギャンブル性が低くておもろくないね。
ガマを開けたときの快感が低い。
ちょこまか脈を叩いていたら、銀鉱物の結晶を発見。
ここにはちょこっと珍しい鉱物が出ることは確認している。
喜んで包んで持って帰る。
しばらくそんなことをしていたら、携帯電話が入る。オフクロからだ。
「道がわからん」とのこと。
太陽も出ているのになぜ道に迷う。
あなた某山岳会に所属していたんでしょーに。
こうやって中高年の低山遭難ってのは起こるんだな*1、と実感。
しばらく電話でやりとりしていたらおぼろげながらオフクロの位置がつかめたので、とにかく場所のわかるところまで戻らせる。
せっかくガマが開いたが、オフクロを迎えに行く。
背中には、石頭3本、タガネ5本、水2キロと、オヤジが「持って行け」とオレに背負わせた紫水晶塊(4キロぐらい)がザックに入っており、えらく重い。
自分の採集物は5個ぐらいのちっぽけな塊なのに。
オヤジとオフクロを連れて、山から下りる。
山菜もあまり無かった。
フキもギボシも採るほど無かったし。
でも水晶はまあまああった。
ガマの右半分は剥がしてきたが、左半分の延長は確認しなかったのが心残りだが、今日は家族サービスだし、いいか。
知人宅に戻り、今日の戦果報告。
ここは独自の文化がある自治体で、文化水準が妙に高い。
今日の紫水晶の場所を知人に教える。
彼が役場と話をつけて、子供が通れる道を作れば*2、親子で紫水晶が掘れるだろう。
そんな場所は昨今ではなかなか貴重だし。
鉱物マニアに開放すると、マナーの悪い人がたまに混じっていて、とたんに山が荒廃することがある*3ので、できることなら親子の水晶掘り場として確保したいんだけど、それも無理な話だろうな。
そういう人は情報通だし。
そんなたいしたものはないので、大人が一日かけて大ハンマーとバールを振るって露頭を崩すようなことはして欲しくない。
そんなことしたら、あっという間に採れなくなっちゃうよ。
お願いだから節度ある行動をね。
それがいやなら自分でどんどん産地開拓してくだされ。
ここは、伝説の孔雀石の産地情報もあれば、ペグマタイトも変成帯もスカルンも熱水脈もあるところだ。オレの好きな沸石も採れる。
水晶も採れるし、いろんな鉱物が採れる。斧石もある。楽しいところだ。
昔、トータルで三ヶ月ほど住んだことがある。
温泉に入り、泥を落として、ちんたら家に帰る。
家族サービスの一日だった。