硫化鉱物っておもしろいね

夏休みに採った金属硫化鉱物の標本を整理して、ゆっくりじっくり観察してみました。
あるガマの中にころころ転がっていた黄鉄鉱の結晶がへんてこでした。
e (210) 、s (321)*1 の面で囲まれています。
e はいわゆる pyritehedral な面で、頻繁に出現するのですが、s が大きく出ている結晶ははじめて見ました。
s (321) は o (111) 方向に近い3つ組みの面で、3つが三回らせん軸を持っているような配列で並びます。キラルな切り方なので当然です。
立方晶系は三回軸を4つ有するという対称要素を思い出させてくれます。
でも、別のガマは o (111) だけの結晶だったり、o (111) と a (100) だったり。a (100) だけだったり。
黄鉄鉱も、こうやってじっくり見ると面白いです。貫入双晶があればもっとよかったです*2


黄銅鉱は、双晶が多数含まれているというのはわかっていたのですが、よく観察すると3種ぐらいの双晶に分類されそうです。
耳付きは大変わかりやすいのですが、口を開けた魚みたいな接触双晶がいくつも混じっています。
ヘンな耳付きもあります。
じっくり見ても、三者は結晶学的に異なります。そしてそれぞれ、いくつもあります。
三連双晶もありました。
夏休みの黄銅鉱の写真は、魚の双晶(晶癖がよく出ていない)のようです。二つの結晶の境界がわかりますか?

しかも、これ、こっち側だけ三角黄銅鉱*3になっているようです。
荒川のものみたいなのはありませんでしたが。
なぜ、tetragonal, I-42d なのに向こうとこっちの面の出かたが違うのか、すごく不思議です。
X線結晶学が広まる前、黄銅鉱の結晶系についてしばらくもめた理由はここにあるんでしょうね。


簡単な硫化鉱物でも、面が豊かだと観察して楽しいです。
この間の産地は1−3cmの間の結晶が多かったので、ルーペがいらないのがいいところです。
最近、老眼でピント合わせがつらくって・・・

*1:もしかすると t(421) かも。目で見ただけではよくわかりません。

*2:黄鉄鉱の penetration twin ってなかなか無いんです。

*3:特殊な面で囲まれたオムスビ型の黄銅鉱結晶。荒川鉱山のものは古くから有名。日本では他には舟内、宮田又など。今ではこの3つの産地で良質の黄銅鉱結晶を探すのは難しいです。