化学

唯物論者によって信仰される宗教の一。信者は化学者と呼ばれる。紙と鉛筆だけでは衣食住の確保に不安がある場合、この宗教によってその原罪を免責される。経典は宗派によって異なり、バイルシュタインと呼ばれる全数十巻にも及ぶ取るに足らない書物群のこともあれば、雑誌と呼ばれる「ちり紙交換も持っていかないような」紙質の悪い小冊子のこともある。信者は森羅万象の事象はすべてこの宗教の教えによって説明できると信じて疑わない。が、これは紙と鉛筆だけで食を賄える「物理」と呼ばれる宗教の信者においても同様である。
 この「化学」という宗教の名称は、「科学」と発音がまったく同じなので非常に紛らわしい。そのため、両者を区別するため、しばしば前者を「ばけがく」と呼ぶ。つまり、化けるのが「化学」者で、そうでないのが「科学」者ということになろう。