スケールアップに伴う誤解

学生さんに企業との共同研究の実験をやってもらいました。
内容は秘中の秘なのですが。
以前の論文の追試をしてみましたが、なかなか文献どおりの収率が出ません。
まあ、多少収率が悪くても、スケールアップして量を増やせばいいだろう、ということになり、倍の量の実験をお願いしました。
フラスコも倍、溶媒量も試薬の量も倍です。
んで、学生さんがテキテキ滴下しているところまで付き合って、私はデスクワークをしていたのですが、いつまでたっても学生さんが帰る気配がありません。
どうも、滴下時間まで倍にしていたらしいのです。


いや、それは倍にしなくていいんだってば。
倍にしなければならないのは、滴下時間ではなく滴下量のほうです。
滴下量を倍にすれば滴下時間は半分のスケールと同じになります。


ただし、学生さんの名誉のために申し上げておきますと、発熱量の大きな発熱反応の場合、フラスコの冷却が不十分になりやすく、スケールを倍にしたら滴下時間も多少は延ばしたほうがよいケースも多いです。
フラスコの内容量が2倍になっても、フラスコの表面積はせいぜい1.5倍程度にしか増えないので、徐冷しづらいのです。
みんなスケールアップで失敗するんですよね。私も何度もやってますし。