市販薬品から爆発物製造、容疑で男を逮捕 警視庁

http://www.asahi.com/national/update/0611/TKY200706110269.html


過酸化アセトンの環状三量化したものです。
過酸化物100gって、かなりの量です。
普通、研究で使う過酸化物は、多くて1−2g程度で、それ以上は見たくもないのですが、こんなに作ってどうするんでしょう。
この種の過酸化物爆薬は酸素−酸素結合の結合解離エネルギーの低さのために爆発(爆轟)を起こすのですが、この種の分子は結構簡単にできるものが多くありますからねえ。
酸素−酸素結合を合成で作るには、簡単なのは過酸化水素水(通称:過水)なのですが、これは殺菌剤や漂白剤で大規模に売られているので、取り締まれないのがこの件の背景。
過水が売られている限りこのような事件は後を絶たないのでしょう。
そういうのを作りたい人は大学に入ってアジ化物や過酸化物の研究でもしなさいって。
過酸化アセトンなんて簡単で安定で作っても面白くないでしょ。混ぜりゃできるだけの混ぜ屋の仕事で、合成技術もへったくれもない。作るならポリアジドにしなさいよ。


危険物の本当の怖さをよく知ってて、それを安全に(最小限のリスクで)扱えるのがプロの仕事です。
素人がこういうのを作ろうとすると法に引っかかりますし、プロの指導の下でしないと死にますよ。マジで。
今回、彼が爆死しなかったのは、彼が腕がよかったからでも、合成設備がととのっていたからでもなく、ただ単に運がよかっただけだろうと推測します。


もっとも、この種のものって、禁止されると作りたくなる人が雨後の筍のように出るのですが、「何でも作っていいよ」って言われるとおっかなくて触りたくも無くなるんですけどね。
「何でも作っていいよ」って言われるまでの下積みで、その怖さが理解できるようになるのでしょう。
もっとも、「怖いもの見たさ」といったような好奇心がなければ研究するのはつまらないでしょうし、その辺のバランスが難しいので、彼に「バカなことするな。こういうのは絶対するな」とは私の身上からは言えないのです。
まあ、「他人に迷惑かけるなよ。法律はなるべく遵守しろよ。本気でやりたいなら研究機関に来いよ。」ということで。