大阪石

すでに yfrock さんや goito-mineral さんのところで触れられていますが、平尾旧坑の新鉱物は名前が付きました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070618-00000019-san-soci

 大阪府箕面市の鉱山跡で新種の鉱物が見つかり、岡山大教育学部の草地功教授(鉱物学)らのグループが「大阪石」(学名・オオサカアイト)と命名し、国際機関から新鉱物と認定されたことが17日、分かった。日本で発見された100番目の新鉱物となった。


 大阪石は岡山大大学院生だった会社員、大西政之さん(26)=京都市=が8年前、箕面市の廃鉱「平尾旧坑」で発見した。


 草地教授らの指導で分析したところ、淡い青色をした硫酸亜鉛の一種で、薄い六角形の結晶構造を持つ未知の鉱物と判明。国際鉱物学連合に昨年申請し、今年2月に新鉱物と認定された。


 地下水に溶け込んだ亜鉛などが鍾乳石のように沈殿してできたとみられ、水分が多く非常に軟らかい。草地教授は「湿気の多い坑道内だから生成できた鉱物。人間が坑道を掘ったことで偶然、生まれた」と話す。


 新鉱物では平成15年に「東京石」が認定されており、東西の大都市の名前がそろった格好。大阪府で新鉱物が見つかったのは初めて。


 大西さんは大阪府出身で、中学生時代からの鉱物ファン。「最初はまさか新鉱物とは思わなかったが、地元で見つけたので愛着があり、分析を続けた。成果を出せてうれしい」と喜んでいる。

大阪石になりました。
命名がストレートなのはいいのですが、ちょっと寂しいですよね*1
海神石のような「え?」という意外さと、学術的な含みがあってもいいのではないかと思います。
自治体に愛着があるなら、「なにわ石」(なにわは原則ひらがな)とか渋いかも。
ここの新鉱物の命名は以前ちょこっとヘンな提案をしたのですが
http://d.hatena.ne.jp/doublet/20050214#p3
「地学研究石」でも「岡山大学石」でもありませんでした。当たり前か。


goito-mineral さんも指摘されていますが「薄い六角形の結晶構造を持つ」は語句の用法が違います。
結晶構造(crystal structure) というのは学術用語で、原子もしくは原子集合体の結晶の単位格子における位置を表す言葉です。分子結晶だとそれがすなわち分子構造に結びつきます。
これがヘキサゴナルで、c 軸側に薄い単位格子だったらぎりぎりセーフの表現ですが、これはトリクリ。正しい表現は「薄い六角形の結晶外形を示す」です。


ちなみに、この化合物はすでに古くに合成研究があり、結晶構造解析が Acta Crystallographica 誌に報告されているようです。
Bear, I.J., Grey, I.E., Madsen, I.C., Newnham, I.E., Rogers, L.J. (1986): Structures of the basic zinc sulfates 3Zn(OH)2•ZnSO4•mH2O, m = 3 and 5. Acta Crystallographica, B42, 32-39.
ですので、 CAS 番号は残念ながら新しいものが貰えず、お古を使いまわします。
という話はいずれにせよ、新鉱物というのはいいですね。夢があります。


青色は不純物イオンの二価の銅イオンの色ですから、純粋な大阪石は d10亜鉛イオンの色、すなわち無色透明である可能性が高そうです。


ISO14001 風味な表現をすれば、鉱物採集は「著しい(負の)環境側面」なのは確かなのです。
鉱物採集の正当性というか、大義名分というか、意味づけを求めるのなら、正の環境側面はやはり必須です。
そういう点で、アマチュアが新鉱物を発見し、地元大学と共同で記載し、(地元自治体名を)命名するというのはやはり有意義ですばらしいことです。


ビバ!大阪石!

*1:命名権の一部が発見者に行っているのかもしれません。だとしたらケチつけてごめんなさい。