研究者の血

ある女性研究者から相談され、「子供できちゃった。嬉しいけど産めないよ」ということでした。
もちろん私の子ではありませんよ。思い当たるふしがありません。
私は「おめでとう」というしかありませんでした。
研究活動と出産育児をどうやって両立させたらいいものか、想像もつかなかったのです。
というところで目が覚めました。
なんだよ夢オチかよ。


彼女の環境である、アカデミックな研究職がどれほど不安定で、綱渡りかはよく知っています。
とにかく矢継ぎ早に論文を出し続け、任期内に多大な成果を出して次のポストを狙わないと。
深夜、家に帰っても、論文書いて寝るだけ。
彼氏作って子供こさえる余裕なんてありゃしません。
出産適齢期?うまいのそれ?
この国の女性の理工系研究者のうち、どのくらいの割合が既婚で、どのくらいが出産経験ありかは知る術がありませんが、男性研究者に比べその率がかなり低いのは容易に想像が付きます。
男性は出産行為こそできないものの、不安定な任期職に付いたら、やはり結婚出産にはブレーキがかかるでしょう。
もちろんちゃんとやっている方もいらっしゃいます。
研究を取るか家庭を取るかという択一は、本来成立しないものです。
家庭を取るのは生物として当然のことでしょうから。


私の家は代々の職人一家であり、私と兄がその流れを継がなかったのですが、職人気質みたいなものはやはり引き継いでいます。
それが先天的なものか後天的なものかはわかりませんが、親戚を見ていると必ずしも後者だけとは言い切れない部分もあります。


もし、理系研究者としての血というか、遺伝可能な要素のようなものがあるのだとしたら、近い未来に淘汰されるんじゃないかな、と寝ぼけながら布団の中で思いました。
典型的な「杞憂」なんですけど。
出産率はさまざまな因子により影響を受けるので、きちんとした統計を取らないと論ずるのは危険なんですが、まあ、夢オチなんで勘弁してください。
もちろん私にはそういうのはありません。職人の血は引いているでしょうが。
私のやっている研究分野は、生まれついでの才能を要求されるほど高度化されていません。


(追記)気になったので、今日、夢で見た女性に会ってきたのですが、今の仕事はさっくり辞める予定を立て、別の職種に向けての勉強を頑張っているそうです。
子供はまだできていなさそうです。ふむ。
だいぶたまっていたらしく、話を聞いてきたのですが、一時間程度愚痴を吐いてすっきりしたようです。
彼女の愚痴は、職場への不満と人間関係と将来への不安に傾倒していました。
それを解消する術は私は存じませんが、まあ話を聞くだけなら。