マイクロニッコール

ウェブをいろいろ探して、ニコンの近接写真用レンズの系譜を見ていました。
日本光学は、「等倍を超えなければマクロとは言わぬ」という定義上の問題から、「マクロ(Macro)」ではなく「マイクロ(Micro)」という名前で近接写真用レンズを売り出しています。
で、Micro Nikkor の源なんですが、これはやはり Micro Nikkor 5cm に行き着きます。
これについてはニコンの HP を参照のこと。
http://www.nikon.co.jp/main/jpn/profile/about/history/nikkor/n25j.htm


この設計をいじったのが、Micro Nikkor 55mm F3.5 です。
大ベストセラーで、今でも大学にはふた昔前の購入物がゴロゴロしてます。
これは私の常用レンズで、昨日の写真もこれです。
実はこのレンズ、お気に入りなので3本も持ってたりします。

集めるつもりは無くても、集まってきちゃうんですよね。不思議。


で、その後現在までにどのような Micro Nikkor が市販されたのか調べてみますと・・・



のようなまとめがありました。
マイナーチェンジがありますが、それほど数は多くありません。
60mm, 105mm, 200mm と PC Micro 85mm が現行製品です。
Zoom Micro Nikkor と PC Micro Nikkor は生産中止になりました。


この中で、市販された経歴があるにもかかわらず知名度の極めて低いレンズが2本あります。
70mm F5 と 150mm F5.6 です。聞いたこと無いですよね。
いずれも、あきやんさんのところに紹介がありました。
http://homepage2.nifty.com/akiyanroom/redbook/collection/prof-k.html
http://homepage2.nifty.com/akiyanroom/redbook/collection/uli04.html


レンズ配列から想像するに、Micro Nikkor 70mm F5 は 55mm F3.5 の流れを直に継いだクセノターで、近接撮影では最良の像を結ぶのではないかと。マウントは L39 です。
150mm は私が使うには長すぎます。12cm でも手を焼きますからね。
なんでこんな古いレンズを調べているかと言いますと、70mm F5 が某国にあるということを偶然に見いだし、手配をかけているからなんです。今月に届きます。
どんなレンズなんだろう。わくわく。


Micro Nikkor 55mm F3.5 はもう30年も前のレンズですが、びっくりするほど良く写ります。
もちろん、最近のシグマのレンズもよく写ります。無限遠から等倍まで見事にこなします。
ただ、Micro Nikkor には半世紀の歴史があります。
「レンズの向こうに歴史が見える」「レンズを通して歴史を写す」。これが、今回 Micro Nikkor 70mm を買おうと思った理由です。
シグマのレンズより安いですしね。(←これがホントの理由)


そして、最近はいい接写用レンズがありません。
接写をはじめるとすぐに、顕微鏡写真とマクロレンズの間にポッカリ開いた撮影の難しい領域に行き当たります。倍率で言いますと、等倍以上5倍未満です。
等倍までならそれほどの困難はありません。その先。
大きくて美麗な鉱物標本なら等倍で充分なのですが、私はそれほどいい標本を持っていませんし。
レンズリバースでもまずまず写りますが、やはり収差が目立ちます。
この領域を満足な画質で撮ることのできるレンズは、キヤノン MP-E しか現在では売られていません。
ちょっと前までは、ミノルタ、ライカキヤノンオリンパスニコンなどの大手レンズメーカーが近接撮影用のベローズ用短焦点接写レンズを出してました。
現在、仕事で使う低倍率撮影は、長作業距離のズーム系レンズを CCD カメラで使っているのですが、どうしても拡張性に難があり、画質もそれほど良くはありません。
小さな鉱物の写真を撮ろうとすると、どうしても古いレンズを探すしかないのです。


カメラ部門と顕微鏡部門の断絶、そして、売れないものは切り捨てようという当然至極の経営理念が、撮影が難しい領域を作り出しているのでしょう。
今のコンピュータを利用した光学設計をもってすれば、マクロニッコールよりはるかに良く写る高倍率接写用カメラレンズを設計することもそれほど困難ではないでしょう。
ただし、使いづらく、売れないのです。
「売れないから作りません。そういう写真を撮りたい人は研究費を稼いで AZ100M を200万出して買ってください。」そういうことです。