ゴキブリ水晶

煙水晶@Vitória da Conquista, Bahia, Brazil

Fujinon EX 105/5.6 (f = 11)/D80


天然の放射線により、カラーセンターができて黒くなった水晶です。
まっくろけっけで、しかも柱面がまったく無く、一見して水晶だとわかる人はあまりいません。
ゴキの色艶に似ているので、「クカラーチャ水晶 (cucaracha quartz)*1」と呼ぶことにしましょう(笑)。
不純物は ppm 単位のアルミニウムイオンで、放射線による電荷分離により可視領域全域に吸収が生じるものだと思います。
しかし、主成分は依然として二酸化ケイ素(trig. P3121)であり、通常の回折実験では通常の水晶と区別を付けることは不可能です。


人は簡単に環境に染まり、古い自分を脱ぎ捨てて、新しい自分を模索していきます。
しかし、どんなに見た目が変わっても、本質は変えることができないようです。
大切なのは外見ではありません。
ならば開き直って、変わらない自分をからかいながら底力をつけていく、というのも一手法でしょう。
人生は、一生をかけた勝負です。そう簡単に勝敗が決まるはずはありませんよ。


この標本は形見になってしまいました。
あの倉庫の前で店番していた猫も死んでしまい、思い出の標本になりました。
ほんとうに、いろいろ思い出されます。

*1:cucaracha はスペイン語でゴキブリのこと。メキシコの民謡の「La Cucaracha」は兵士の甲冑をかぶった姿をゴキブリにもじったものだとメキシコで教わりました。マリファナ吸いたい。