カンザスの日本人

最近忙しくて本を読む暇がありませんが、一番感銘を受けた本はこれでした。

カンザスの日本人―ガラスに魅せられた男

カンザスの日本人―ガラスに魅せられた男

著者は大野貢。東大ガラ工にいた方です。
ガラスのクラインの壷を作るので有名になった方ですね。
そのまま自伝なんですが、ガラス屋の丁稚をして身に付けた腕で東大化学教室で職人をするも学歴社会に猛反発し、英語がまったくできないのにカンザスに渡って云々・・・という内容です。
バリバリに職人肌。100%純粋な職人の考え方です。
腕の立つガラス職人が、いかに周りに愛されるか(それはもちろん人柄もあるんですが)が如実に現れていますね。


ちょこっと引用します。
ボーイング社が流体配管用モデルをガラスで製作しようとしたが、アメリカ中のガラス屋に断られ、ついに著者に仕事が回ってきたときのやり取りなんですが・・・

「つくってみましょう。で、何本必要なんですか?」
「十六本です」
「それでは、二つの答えがあります。つくってみないとわかりませんが、十六本ちょうどつくりましょう。それで、十六本全部パスするか、全部不良かのどちらかです。もし不良の場合は、どんなにもう一度作ってみてくれと言われても、私は手を引きます。このような仕事は、できた本数の何パーセントが良で、何パーセントが不良ということはありえません」


私は職人の息子ですから、こういうのはよくわかります。
もー。ホントに頑固なんだから。品質管理もへったくれもありゃしない。


しかし、こういうの好きです。
腕が立ちに立って、世界中でたった一人しかできない仕事っていうレベルになると、ある程度啖呵を切っても許されます。
ブラックジャックみたいなものです。


この本、理化学ガラスに造詣が深くない人向きで、ガラス細工の難しさを具体的に記述してはいないのですが、それでもいろいろな化学屋さんに読んでほしいです。
京大の某さん、いかがでしょうか?