方解石

何の変哲もない方解石の研磨へき開片です。ブラジル産2千円也。
大昔はアイスランド名産だったらしく、今でも「アイスランドスパー(アイスランドの氷)」って言われます。
今はブラジル産ばっかり。
calcite


天然の炭酸カルシウムの結晶で、三方晶のものです。
炭酸イオンの配列の異方性により、中を通る光が二種類の屈折率(正常光線と異常光線)によって個々に屈折されるため、二つの光線に分かれます。
文字を透かすとこのように二重に見え、楽しいの♪
この現象を複屈折と呼びます。
方解石はかなり強い光学異方性を持ち、はっきりと目で見て「ああ、複屈折性だね」と合点。


この現象は方解石に限ったものではなく、立方晶とアモルファスをのぞくほとんどの固体に程度の差こそあれ見られるものです。
水晶でも出てきます。
以前お見せした水晶のインクルージョンが二重に見えるのもこれが原因。
orangeriver4


硫黄などもかなり強いのが見られます。
化学者になじみがあるのはジメチルスルホキシド (DMSO)ですね。アレの結晶も強い複屈折があります。
今の時期は凍ってるでしょうから、よく見てください。見ただけですぐわかります。


透明な固体材料をレンズのような光学材料に用いる場合、アモルファス(ガラス)が好まれます。
光学ガラスは、方向による屈折率の差がないからこそレンズの材料にできるんですね。
蛍石(フローライト)、フッ化リチウム、塩化ナトリウムは立方晶で光学等方性なので、これらもおk。


ただの炭酸カルシウムでも、面白いですよね。
なお、この複屈折で見られる像を両目で立体視すると、正常光線の作る像より異常光線の作る像のほうが奥に位置しているように見えます。
これも複屈折のマジックです。


でね、この間オヤジがこれが欲しいってんであげたんですよ。きれいなヤツ。
レーザーポインターで光路が見えないぐらい透明なヤツを選んだんですけど。
あとでオヤジから電話が来て、「梅干を乗っけといたら白く濁ったぞ。おかしいぞ」って言うんです。
あたりまえだっつーの。