力量ある有機合成

と、昨日のに続けて駄文を。
数学の The book の考え方を模倣すれば、The reaction や The conditions、あるいは The procedure ってのはあると思うんですね。
基質 A から目的物 B を合成するのにおいて、神様ならこの反応をこの条件で、この操作で行うぞ、というのが。
トリッキーかつ巧妙なのもあれば、スタンダードなのも。
23 メッシュのマグネシウムに 0.341 mol/l の原料を 189 分で落とし、35 分後に速やかに加水分解して乾燥して 249 ml の酢酸エチルから再結晶かけると純度 99.7% の目的物が単離収率 99.3% で取れる、みたいな。
超多変数関数の極大を求めるような話です。
でも、そんなのははじめてヤル場合にはわからないのです。
パ−3のホールで、暗闇の中ホールインワンを狙うようなものですから。


はじめてする反応で、過去の知識と例と経験から、出来うる限りニアピンを狙っていけるのが、合成の力量だと考えています。
細かい条件出しは、そこを足がかりにすれば詰められます。これは機械でもできます。
でも、最初のショットは、やはり人の手でないとね。
ここで、どれだけ的確な選択ができるか。神様のみぞ知る条件により近い極大点のすぐそばに落とせるか。問題はこのワザだと考えています。
期限のある研究だと、ホントにこれを要求されちゃうんですね。
条件振ると、最初にやったのが実は一番良かったってのがよくあるじゃないですか。
あれは運のよさもままあるんですが、実験者に力量があって、センスがあることの顕れだと思っております。