RMS マクロの世界

最近、RMS マクロの話題でこの日記を訪れてくださる方が多いです。
ありがとうございます。
このあたりの情報はウェブ上にはあまり多くはありません。
なにかいいネタが入りましたらお知らせくださると嬉しいです。
Othello


RMS (Royal Microscopical society Screw mount) というのは、英国顕微鏡学会ネジマウントのことで、顕微鏡対物レンズの標準規格ネジマウントのことです。
直径 20.32 mm (0.8 inch)、ピッチ 0.706 mm (1/36 inch) の、カメラレンズマウントから考えるとすごく小さいネジマウントですが、この規格で作られているマクロレンズは基本的には等倍以上の設計倍率であり、写りはとてもよいです。
はずれを探す方が難しいんですね。
そして、この倍率ですと、撮影は相当苦戦します。
時代の流れに取り残されてしまった、小さな小さな宝石なのです。


「顕微鏡対物レンズとどう違うのよ」という疑問は当然出てくるのですが、

  1. 直焦点に感光体を持ってきて撮影する目的で設計されている
  2. 本質的に絞りを有し、解像度よりはむしろ被写界深度の確保を考えている

ところが顕微鏡対物レンズと異なる点です。
通常の顕微鏡対物レンズは空中像を接眼レンズや撮影レンズで拡大結像させますが、そうではなく、直焦点の利用が RMS マクロレンズの大きな特徴です。
また、解像は顕微鏡対物レンズにはかなわず、それよりもむしろ被写界深度を大事にした絵作り、イメージサークルの広さ、像の平坦さなどを念頭に設計されています。
しかし、顕微鏡対物レンズでも絞りがあるものもありますから(上の写真にも U5, U10, U20という絞りつき対物レンズ3本が入っています)、その境目は案外とはっきりしないものです。
固定長のフランジバックで設計された顕微鏡対物レンズとは違い、ベローズを自在に伸張させて、目的の倍率で撮影できるというのも大きな特徴です。


各社の代表 RMS マクロレンズ


Nikon: Macro Nikkor 19/2.8, 35/4.5
Canon: Macro photo 20/3.5, 35/2.8
Olympus: Zuiko Macro 20/3.5, 38/3.5
Minolta: Bellows Macro 12.5/2, 25/2.5
Topcon: 30/3.5
Zeiss: Luminar 16, 25, 40, 63, Mikrotar 10, 15, 20, 30, 45, 60, Planar 20, 30, 50
Leitz: Photar 12.5, 25, 50, Summar 24, 35, 42, Milar 20, 30, 50
B&L: Micro Tessar 16, 32, 48
LOMO: Mikroplanar 40/4.5


数えてみたら、ここにあげたレンズのうち、17本がウチにありますね。
約半分か〜。
集めるつもりはあまりない(じつはちょこっとある)んですが、集まったなー。
このリストですと、特に探しづらいのは Mikrotar 10mm, Mikroplanar 40mm はなかなか出てきません。
前者は生産数が少なすぎ、後者はロシアの輸出規制がかかっているためです。
プラナーは eBay.de で見たことがありますが、買えませんでした。
Luminar や Photar は生産時期で設計が違いますし、Zuiko Macro はシングルコートもマルチコートもあります。
それを言い出すときりがないです。
もっと多くの RMS マクロレンズがありますしね。
そこらへんがこの沼の深みです。


こういうヘンテコなレンズを探して高倍率接写で遊ぶというのは、コアでマニヤな趣味ですが、なかなかおもしろいのです。