瑠璃(るり)

lazurite_alas
Badakhshan, Afghanistan


もう一回撮り直しました。瑠璃(lazurite)です。
ラピス・ラズリ (lapis lazuri)というほうが通りがよいでしょうか。
とても古くから知られた鉱物ですが、産出は世界的にも限られ、アフガニスタン、チリ、ロシアなどで知られます。
最も著名なのはアフガニスタンのラピスで、世界最大の産出量を誇ります。
日本では、赤坂金生山で報告されていますが、どうもこれは人工物っぽいと言われています。


普通は多結晶で不透明な塊状集合体で産出することが多く、それに比べると自形結晶は稀です。
「瑠璃も玻璃も磨けば光る」ということわざは、ラピスラズリは塊状の多結晶集合体であるために磨かないと白っぽくみすぼらしく見えるが、磨くとこの鮮やかな青が出てくることを表現しているのでしょう*1
天然の顔料としては藍銅鉱(群青)と共に、太古より極めて貴重な青の源として利用されてきました。
顔料名はウルトラマリンです。ウルトラマンじゃないよ。
瑠璃色(るりいろ)という名の通り。
独特の鮮やかな明るい青で、群青の深みとはだいぶ様子が異なります。


時折、方解石に埋没した状態で菱形12面体の結晶をなして産します。
この標本は、空隙に晶出したもので、隙間をイオウが埋めており、イオウを有機溶剤で溶かし出したものです。
白色の鉱物は方解石、黄色の金属光沢の鉱物は黄鉄鉱です。
黄鉄鉱とは(おなじ硫化物のためか)非常に相性がよく、いつも一緒に出てきます。



結晶面は、d面を基調とし、その稜を発達の悪いn面が削いでいます。
lazurite_2
figure_lazurite
これは Goldschmidts の Atlas から金の結晶を抜き出したものですが、まあいいでしょ。


結晶構造はかなり特異なものです。
単位格子の中にSi12Al12O32 のアルミノケイ酸塩の巨大なカゴがあり、この中心にイオウ原子がいます。
カゴの環は Al3Si3O6 からなる12員環ですが、この中にナトリウム原子もしくはカルシウム原子が捕まっています。まるでクラウンエーテルに捕まったアルカリ金属のように。これでカゴの負電荷を中和しています。
また、ナトリウムおよびカルシウムのサイトは完全にランダムでバラバラです。
真ん中のイオウ原子と、カルシウムの間に酸素を挟んでいます。硫黄は構造解析上は四配位に見えるのですが、ディスオーダーだから違います。
鉱物の成分的分類ではケイ酸塩としても、硫化物としても分類することができるでしょう。


(メモ)上はPN95mmF2.8A で5枚積み。プリンちゃんはボケが素直だからちょいアンダーで撮るときれいに積めます。下は Macro Nikkor 65mm で15枚積んでます。色が揃わないっす。

*1:ちなみに「玻璃」はガラスの古語です。