劈開

写真は、昨日拾ってきた重晶石。
barite_cleavage


ヒビが無数に入っていて、その方向がほぼ二方向に揃っているのがわかるだろうか。
こういう、破断の際に優先してある特定の方向に破壊する現象を劈開(へきかい、cleavage)という。
これは、イオンや分子の配列が、特定の方向でイオン間(もしくは分子間)の相互作用が比較的弱いときによく見られる。
割れやすい方向がある、ということ。
最もわかりやすい例は雲母で、シート状のケイ酸の網目があるので、この網を剥ぐ方向に割れやすい。
ダイアモンドにもある。方解石(炭酸カルシウム)も顕著。
弱いながらも、石英にも見られる。そのため石英は柱状結晶を横断するように割るのは難しい。


正確には、重晶石は三方向に劈開がある。もう一方向は、板状結晶に対して平行方向。
そのため、重晶石の結晶を砕くと、ひしゃげた菱餅のような形に細分されて粉々になる。
どこまで割っても、この形。
barite22


この劈開を利用しないと、シリコンウェハは思い通りの方向に割れてくれない。
岩塩の結晶も、劈開を利用すると直方体の板にすることが容易にできる。
大きなダイアモンドの原石も、よく考えてから劈開を利用してラフに形を作り、それを研磨してカット石にする。


有機化合物の分子結晶は、比較的等方性に近いファンデルワールス相互作用で分子結晶を作っているので劈開は観察されづらいのだが、ある種の芳香族化合物、アルコールおよびカルボン酸などに時折見られることがある。