ヨウ素とヨウ化カリウム

帰ってきたのが夜12時で、それから結晶作って撮影したので4時に寝落ちしてしまって説明が書けなかったので、今日追記。


巷を騒がすヨウ素の話。
一言で「ヨウ素」と言っても、大きく分けて二種類ある。

  1. 元素としての広義のヨウ素ヨウ素化合物およびヨウ素単体)
  2. 単体としてのヨウ素(I2

これを混同している人がいる。
普通自然界に存在するのは、安定同位元素としてのヨウ素127 で、これには単体も化合物もある。
ところが、原子炉内部からは、ウランの自発核分裂によって、ヨウ素131 という放射性同位体ヨウ素化合物が出てくる。その核の半減期は約8日。
だから、「ヨウ素」と聞いたら、安定同位体の(普通の)ヨウ素単体 I2なのか、元素としての広い意味でのヨウ素なのか、あるいは放射性同位体ヨウ素化合物なのかをはっきり区別しなければならない。


これが普通の単体ヨウ素 I2
蒸気圧が高い金属光沢のある青黒い結晶で、刺激臭が強い。
iodine
iodine crystals 1


こちらがヨウ素化合物の代表。ヨウ化カリウム
無色透明の結晶。
非常に安定で毒性も低く、塩(塩化ナトリウム)と類似しているが、密度が高い。
塩(塩化ナトリウム)と同じくガンエン型結晶構造を取り、ころっとしたサイコロ状の結晶を作る。濃度が高いと骸晶もよくできる。
KI


で、原子炉内から放射性のヨウ素(化合物)が多量に漏洩すると、人体に吸収されると甲状腺に溜まり、そこで分裂して甲状腺内部被曝を起こし、組織に悪影響を及ぼす。
これは、細胞分裂が盛んな若い人ほど影響が出る。
それを防ぐために、被曝が予想されたら、それ以前に安定同位体ヨウ素化合物を若干多めに摂取し、必要なヨウ素をすべて安定同位体ヨウ素で補い、入ってくる放射性ヨウ素も希釈しブロックする方法がある。この薬をヨウ素剤という。
ただしそれは、化合物としてのヨウ素(イオン)。使うのはヨウ化カリウム
ヨウ素中毒を起こしやすく、投薬のサジ加減は難しいらしい。


間違っても、単体のヨウ素 I2 は飲んじゃダメ。


似てるけどそれは別物。単体のヨウ素は高い有害性がある劇物
腐食性もあって、レンズの金属部を腐食しちゃうぐらい(だからヨウ素の撮影は嫌い)。
ハロゲン単体は、みんな強い有害性があり、塩素は毒ガスにも使われる。
イカにかける塩の代わりに、塩素ガスを撒き散らす人はいないよ。


放射線に知識のない人が、イソジンをはじめとするウガイ薬を薄めて飲むとよいってデマが流布してるようだけど、それは危ない。
イソジンに入っているのは単体のヨウ素等価体で、多量に飲むとやはりヨウ素単体と同様の有害な作用を人体に及ぼす。
こんなの必要量飲んだら、放射線障害よりよっぽど危険で、こっちでひっくり返ってしまう。
薬かと思って毒を飲み、それで寿命を縮めることになる。
http://www.nirs.go.jp/data/youso-1.pdf


ウガイ薬は飲んじゃダメだぞ!


それに、今回の事故では、現時点では広範囲にヨウ素剤を服用する状況になるほど、放射性ヨウ素は飛び散っていない。
まずは落ち着こう。


(追記)けいとうさんのところに、外国のヨウ素剤事情の話があります。こちらも。
http://d.hatena.ne.jp/keitoubox/20110315/p1