ジスプロシウム

これもかなり珍しく、野外では見かけることのない元素です。ジスプロシウム。

重希土類の中堅で、銀白色の金属です。空気酸化に対する安定度はランタノイドの中では並。空気中で写真を撮影しても腐りません。



Dy



応用としては、とにかく磁性材料。

ネオジム-鉄-ホウ素系の希土類強力磁石は住友特殊金属の佐川眞人博士らの開発した純国産技術ですが、温度上昇によって保磁力が極端に低下する最大の欠点があります。
ハイブリッド車などでは耐熱性の磁石が要求され、これはネオジムの一部をジスプロシウムに置き換えるとかなり改善されます。

また、ハードディスクなどの磁性材料に使うことがたまーに。

磁気ひずみ(磁性材料が外部からの磁界の影響で弾性変形する現象)の最も大きな材料である Terfenol-D は、ジスプロシウムと鉄の合金に、エルビウムがちょっと混ぜられたものです。従来の磁気ひずみ材料に比べると2桁ぐらい変形が大きく、これを利用したセンサやトランスデューサ、アクチュエータなどの研究がなされています。スピーカーなどですね。


地下資源としては、モナズ石やゼノタイム、ユークセン石などにわずかに含まれていますが、もっぱら最近では中国の粘土吸着型鉱床に頼っており、中国の輸出状況に振り回されるため、ジスプロシウムフリーの磁性材料が開発されつつあります。

ジスプロシウムを端成分として含む鉱物は、アガード石-(Dy) でしょうか。・・・これもホントなんかなー。

下の写真はイットリウム端成分のアガード石ですが、参考として。以前広島で拾ってきたものなんですが、これも撮りなおします。



20071126100041

もう一つ、セッコウのカルシウムをそのまま希土類で置き換えたチャーチ石(churchite) という鉱物があり、これの Dy 卓越体があります。かなりレアです。



地下資源ではホンのちょこっと混じっているチョイ役程度の存在ですが、磁性材料の中では鍵元素に近く、しかも仕手相場に振り回されてしまうという困ったちゃんではあります。