タマネギと国防色

タマネギの皮には、クェルセチンというフラボノイドが多量に含まれていて、これは昔からペルシアで染め物に使われていました。

quercetin

日本では、1900年代初めぐらいから軍用衣類の染色に用いられ、大戦末期は民間でもいたるところに使われました。
いわゆる「国防色」であります。
これは、昭和15年の大日本帝国国民服令で制定され、男子はとにかく国民服でした。女子用の国民服も検討されていたのですが、非常に評判が悪く、あまり相手にされなかったという話も。
タマネギの皮は、媒染剤が無いときや、スズ、アルミニウムを媒染剤とするときは黄色の染色ができますが、鉄ではくすんだ黄緑を、銅ではもっと緑っぽい茶色になります。この鉄媒染が「国防色」でした。キレートを作るのは、カテコール部位でしょうね。
クェルセチンを戦中から戦後にかけて研究したのは黒田チカでしたが、女性研究者の研究が、戦時中に女性の色彩の装いを(間接的にも)奪ってしまったのは、皮肉なことであります。


タマネギの皮による


国防色
タマネギの皮を煮出し、塩化鉄(III)を媒染剤*1として染めたもの。上が木綿、下が絹。

*1:オリジナルレシピは硫酸鉄(緑礬)です。同じ色が出るので、鉄は III 価でキレートを作ってるようです。