なぜか、旅に出ると無性に聞きたくなる音楽というものがあります。


まだ車もバイクも持っていなかった頃、大きなザックをかついで放浪していた頃、そういう音楽に出会いました。
旅行一週間目、やっと体が旅慣れてきた頃、「さあ、次は右に行こうか、左に行こうか」と考える自由気ままさが、自分にとっての最高のご馳走でした。
昨日も今日も明日も、自分の時間は自分だけのもの。
そして、それを包んでいたのはそういう音楽でした。


その後、大人になってバイクも車も手に入れました。
聞きたい CD を一度に100枚買える給料も貰いました。
が、なんか違うのです。
旅先で味わった、あのときの、物悲しく、かつゾクゾクするぐらい爽快な感覚が戻ってきません。
車の中であの頃の音楽を聞いてみても。


そして、それは未だに戻りません。
いつか戻ってくるかもしれないと思って、ずっと待っているのですが。