「日本硝子細工夜話」日本硝子細工夜話刊行会 秋山寵三著、木下義夫編

昭和42年刊のやや古い本だが、すごく面白い。
日本のガラス工業、特に理化学ガラスの開拓者に焦点を置き、さまざまなエピソードど共に歴史を記録する良書。
理化学ガラスについては、何冊かの本を読んでいると、川村禄太郎が MVIP で、東北帝国大学理学部付属硝子技術員養成所*1が最重要機関であるらしいことがはっきりとわかる。
ドイツ、イギリスから理化学ガラスを輸入して実験した明治末期、壊れたガラス器具の修理を川村がしたところから始まり、日本人独特の器用さで見よう見まねでガラス器具を作っていく。
日本の理化学ガラスの品質は、現在ではアメリカ、ドイツなどと比べても見劣りしないところまで成長した。もちろん、より優れたものも多い。


職人芸だけではダメなのだが、後継者不足の昨今の状況を考えると、優れた技能者にもっといい待遇をしてやってもいいんじゃないかと思う。
きちんと動作するファイアストンバブラー*2の作れる人がいかに少ないことか。
落とせば割れる消耗品だけど、とても重要な器具のひとつ。
大事に使えば100年もつ。

*1:昭和16ー30年の14年間、多くの技術者を輩出した国内唯一の官営ガラス技術員養成機関

*2:系内の内圧が上がると内部のガスが抜け、下がるとフロートが弁として働き空気の侵入を防ぐガラス器具。こういうダイナミクスを必要とするガラス器具は、形だけじゃダメで多くの経験がないときちんと動作しない。フロートの形状と球面ズリの加減が命で、Ace やスギヤマゲンなど数社の製品を購入比較してみたが、国内のある職人さんの作るものが例外的に優れた性能を有することが判明した。24時間真空にしてオイルが上がってこずに、スパッとわずかの圧力差で開閉するような優良品をいっぱい作れる人はそうそういない。