モザイクでテトリスしましょ

p-ジクロロベンゼン。「パラゾール」の商標でおなじみの防虫剤。
crystalline_tetris


この化合物、ジクロロベンゼン異性体では唯一固体です。
オルトおよびメタは液体です。
この結晶性は分子の対称性の高さに基づき、格子内で矢筈型の分子配列を取っているためなんですが、わかりづらいので略。


結晶化条件によってどんどん外観が変わるのがヘン。
ややホットな高濃度アルコール溶液からは板状の結晶が、低濃度の室温溶液からは長柱状の結晶が、室温気相昇華では短柱状−棒状結晶が育ちます。
いずれも結晶構造は同じ斜方晶ですので、角度すべて90度のレンガが積み重なったような感じの結晶になります。
この種の、結晶の軸方向が同じ結晶が平行に接合したタイプの結晶を「平行連晶」と呼びます。
モザイクとまったく同じこと。結晶学でもモザイク性(mosaicity)といいます。
ただしモザイクは結晶屋や構造解析屋には嫌われます。
モザイクは無い方がいいに決まってるし!
しかし、まったくの完全結晶というのはエンタルピー的には有利ですがエントロピー的に不安定なので、ちょこっと乱れが入ってしまうのは仕方ないんです。
どんな固い人でも、やっぱり乱れるものなのです。じゃなきゃ面白くない。


数度、光源の角度を変えて反射光をいじると、下のように透明感が表現できるんですが、テトリス風味のモザイクを出すために、反射光をちょこっと混ぜた上の写真の方がいいかな。
mosaic1
いずれの写真も Fマウント化 Printing Nikkor 105mm F2.8 を順方向に PB-4 に載せてます。
こいつで少しアオって、ボディは D3。ミラーアップモードでレリーズ駆動。
データ取り込みは Camera Control Pro2 です。


(追記)すごい偶然なことに、つゆねこさんのブログでも p-ジクロロベンゼンの結晶の写真が載ってました。
http://tuyuneko.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/post_032a.html
気相で針状の結晶が出てくるというのがおわかりいただけるかと思いますです。
もっと!6巻は姪に取られてしまいました。