商戦峡

たまには、昇仙峡の土産物屋に出向いて、国産水晶が混じっているか確認してやろう、ということでグルグルしてきました。
最初は、○○××博物館なる土産物屋。
展示があるんですが、なかなか見所あり。
外国の鉱物標本に、けっこう以前のものが混じっています。
乙女の水晶もありました。
しかし、ラベルがメチャクチャ。
ダンビュライトが「ダンビコライト」になってるし、逆に「コニカルコ石」は「ユニカルコ石」です。
間違い探しですかそうですか。
「山梨産」の水晶はノボホリゾンテですな。
産地に関してはオリジナルラベル以外は信用しないほうがよいでしょう。
そいでそこのおじさんが熱心に売り込みます。
波動パワー、ストーンヒーリング炸裂ですよ。
発信周波数の実演を見せて、「これが水晶パワーです」。
水晶パワーを利用して携帯電話のメモリにしているそうです。
物理的・化学的性質もすべて、「パワー」になってしまいます。
その論法ですと、モース硬度が7なのも、無機高分子なのも、透明なのも、耐酸性に優れるのも、空間群が P3121 なのもすべて「水晶パワー」ですな。


パワーストーン石屋が儲かるってのはわかりました。
もちっと勉強しろ。薄っぺらすぎて面白くないですし、説得力もなし。


もうちょっと上に行くと、土産物屋が並び、トリマリンパワーがどうの、水晶の浄化がどうのって売り文句を並べ、跳梁跋扈。
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おまえただ、「双晶」って言いたいだけちゃうんかと。
っていうか、その69諭吉の「エステレル双晶*1」が双晶でなかったら、きちんと返金してくれるんですか。


で、ブラジル、リオ・グランデ・ド・スル州紫水晶がありますよね。
これの母岩をパワーストーン扱いして売るお店があるのです。
電子レンジに水晶、トルマリン、そして件の母岩をあわせてマイクロ波照射し、水晶やトルマリンはあったかくならないが母岩はそうではない、これはすなわちストーンパワーがあるせいだ、って言うんです。
それでまたブチ切れですよ。
そりゃ、水分やマイクロ波に感応する鉱物を含んでいるだけじゃないのか、と。
一緒に、山梨大の助教授が開発したとされる「トルマリン試験機」なるものがあるんですが、これはただのタッチセンサー。
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指の先端でちょこんと触ろうが、手のひらいっぱいで長時間触ろうが、同じだけの熱起電力を生じるんです。
で、先の母岩は振り切れるぐらい電流が流れるっていうんです。
じゃあそこらに転がっている石で試してみろよ、と。
ひどいなこれ。
山梨大の助教授もこんなのに名前を使われることを恥じ、抗議すべきです。
国費使ってなにやってんだ!って言われてもしょうがないですよ。


まあ、このお店はその商品の説明のために大きな紫水晶の母岩を置いていて、それはよかったです。
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ガスの抜けた穴に紫水晶が晶出するのがよくわかりました。産状がきちんと見える良展示。
こればっかりは売り物の紫水晶ではよくわかりません。


伝説の「この裏で採れた水晶*2」という売り文句は、この耳で聞くことはできませんでした。


もちろん、都市のお金が金取りの少ない地方に落ちるってのは大賛成なんですが、あまりにも今のこの状況はひどすぎます。
誰も科学なんて必要としていないってのがよくわかりました。
プラシーボ効果(もしくは大ウソ)に基づく似非科学売り口上は土産物を売る最高のエッセンス。それだけです。


一つ、やはりブラジル産の紫水晶のかけらを100円で買ってきて、帰ってきました。
ああ、私ってなんて嫌われる客なのでしょう!!

*1:高温石英にしばしば見られる r 面を双晶面とする双晶。

*2:水晶の産地を聞くと、「この裏で出た」って説明されるんだそうです。それは裏山という意味ではなく、地球の裏だというオチなんだという笑い話なのです。