単斜硫黄

monoclinic sulfur
Nikon Macro Nikkor 12cm F6.3/Multiphot/D3


硫黄の単体は、性質としては無機化合物よりはむしろ有機化合物に近いものがあり、有機溶媒にそこそこ溶けます。
室温では二硫化炭素が一番溶解度が高い溶媒なんですが、炭化水素系の溶媒でも熱時再結晶ができます。
これがけっこう面白いんですね。
溶存量によって析出温度が変化し、その温度に応じて結晶の形状が変わります。


これはメシチレン (1,3,5-trimethylbenzene) 溶媒で、130℃で飽和ちょっと下ぐらいの濃度に設定したものなんですが、晶相は単斜です。

  1. 冷却に従い、まず針状の単斜晶が盛大に晶出します。
  2. その後、四角板状の単斜晶が溶液をフワフワ浮遊します。
  3. もうちょっと温度が下がると、針状の単斜晶を包み込むように、板状の単斜晶が串刺し状に結晶方位を揃えて成長します。
  4. これが冷えると、端から斜方晶に相転移を起こして、どんどん白く濁っていきます。
  5. 最後に、四角錐の斜方晶がその上を砂糖菓子のように覆います。

見ていて飽きません。


珍しく、針状の単斜晶の端面が出ています。
この段階はステージ4。下半分は斜方、上の方は単斜です。
四角くて、ちょっと歪んでいる、角の切られた結晶が枝の先に付いてます。これが板状の単斜晶(転移前)です。


ただ、撮影がものすごく難しくて。
脆すぎて、容器に入れて溶媒に漬かっている状態じゃないと、動かすことすらできません。
成長も相転移も5分ぐらいで終わっちゃいますし。
撮影者=実験者でないと撮影できない被写体と言えましょう。


あ、色にじみはレンズのせいじゃなくって、溶媒のせいです。
芳香族や含ハロゲン化合物は分散比(屈折率の波長に対する変化)が大きく、像の色がにじみます。