高倍率接写時の絞りと被写界深度と解像力の関係

表題の件ですが、まずは作例から。右上は、ピントの合っている上の褐鉄鉱のピクセルクロップです。
木浦ワンドウ坑の異極鉱の結晶を、Carl Zeiss Mikrotar 45mm で撮影したものです。倍率8倍。
絞り開口 10mm(開放)
Mikrotar_ap_10


絞り開口 8mm
Mikrotar_ap_8


絞り開口 4mm
Mikrotar_ap_4


絞り開口 2mm
Mikrotar_ap_2


絞り開口 1mm(最小絞り)
Mikrotar_ap_1


はっきりわかるのは

  1. 絞るほど、被写界深度は増す(ピントの合う深度が増える)
  2. 総じて絞るほど解像力は下がる(ボケる)

ことだと思います。
このミクロタールという古い古いレンズは収差の処理が不十分で、開放ではレンズの端に近いほうの入射光が像の解像力を下げ、像が悪いです。
ちょこっと絞ったところ、絞りの径では 8-6mm のところに一番おいしい像があります。
ただし、このときの被写界深度は紙のように薄く、アングルの選定に苦戦します。
もっと絞ると被写界深度は深くなりますが、絞りを回り込む光の影響で、解像力が下がってしまいます。
これを回折ボケ(小絞りボケ)と言います。
これはトレードオフの関係にあって、すごく頭の痛いところです。
シャープな像が欲しいので絞りは開けたい、しかし開けると被写界深度が浅すぎて、被写体全域にピントが合わない、というジレンマですね。


結局は、中間を取って、用途に応じてどの甘さで妥協するかという形になります。
例えば、ウェブ上で 500 ピクセル長で写真を見せればいいときなら、絞りを 3mm ぐらいにしてやれば、その画面解像度ではそこそこ解像力を保ったままで、深度が稼げます。
最近出てきた、USB 顕微鏡はおよそ開口径が小さく、ピント深度は深いんですが、回折ボケのために高倍率では像が甘くなる傾向が見られます。
これはもうしょうがないんですよ。
回折ボケは、見かけ上はセンサーサイズを大きくすると低減します。
USB の顕微鏡って、センサーのサイズが小さいですから、回折ボケは強く出ます。
私の使っているカメラは Nikon で一番センサーのサイズが大きいものですが、これでもこのくらいはボケますから。


以下の写真は、日本光学が60年代に設計製造した、半導体のパターンを焼くレンズで撮影したものです。
hemimorphite
回折ボケの影響がないぐらい解像力の高いレンズで、薄い薄い被写界深度の写真を数枚、コンピュータ処理してピントを重ね合わせています。
それでも、このぐらいピントの合う位置って薄いのです。
高倍率の写真は難しいですね。


(追記)あ、この話って、高倍率接写の話です。遠景を撮るなら絞り F = 16 ぐらいでも何の問題もないです。5倍を超える高倍率になると実効 F 値が異常に大きくなってしまうよ、という話です。