アートとしての偏光顕微鏡写真

秋山実氏の写真集をようやく買い求めました。絶版なんですけど。
定価8800円のものがアマゾンで1円でした。すごいな1円かよ。

ミクロ・アート

ミクロ・アート


偏光顕微鏡下で見える多結晶の造形と組織と干渉色の鮮やかさの妙を、アートとしてとらえるという観点では、秋山氏は先駆者でしょう。
偏光顕微鏡下で結晶性化合物の薄片を観察されたことがある方はご存知でしょうが、干渉色が美しいんですね。
下の2枚は私が撮ったある種の化合物の偏光顕微鏡写真なんですが
TCI_D0537
複屈折量、薄片の厚みに応じて色が変わり、光学異方性の化合物はその光学軸の方向によって様々な色を産み出します。
仕事で偏光顕微鏡を扱っている人は、芸術だと考えるよりその組織を作り出す原因を想像しちゃうので邪念となって楽しめないんですが、そうでなければ、その美しさに感嘆できるのでしょう。
ある意味職業病。
9,10-dibromoanthracene


サンプリングは、おそらくスライドグラスとカバーグラスの間に化合物(有機化合物が多い)を挟んで加熱して融液薄片とし、これを冷却して結晶化させているもの、スライドグラスに試料を載せて溶媒で溶解した後に蒸発乾固させているもの、金属表面を金属顕微鏡で見ているものの3パターンだと思います。
ニコンの顕微鏡を用い、これをジナーのシノゴで撮影しているので、非常にきれいです。
やっぱり大型本見開きを撮るにはシノゴだよな、と思いますね。
倍率は、40−600倍程度(紙面上で)。


ちなみに、撮影条件をきちんと知りたい場合は、こっちの方がいいかも。

ミクロのデザイン―形と色彩の創造

ミクロのデザイン―形と色彩の創造

顕微鏡、撮影レンズ、投影レンズなどが記述されています。
重複している試料はあれども、写真は重複していません。


私は、秋山氏のフォロワーになるつもりはまったくありませんでした。
同じことをやってもしょうがないですし。
なので、偏光顕微鏡写真はあえて避けていたのです。
しかし、写真集を何冊か見て気が変わりましたね。
ここに化学と結晶学を足し、美しさを損ねずに科学の味付けを加えることは不可能ではありますまい。