欽一石

アマチャ鉱物コレクターの総帥、故櫻井欽一博士の名前を頂いた鉱物です。
含水の鉄のテルル酸塩で、記載産地の標本存在数がものすごく少ないことでも知られます。産地は河津鉱山猿喰坑ですが、檜沢坑でもあるみたいです。
テルルを多く含んだ金鉱石の二次酸化帯に生じる、褐色の結晶です。


kinichilite
欽一石(kinichilite), (Fe,Mn,Zn)2(TeO3)3(NaxH1-x)-3H2O, hex., P63/m.
静岡県下田市蓮台寺 河津鉱山檜沢坑
国立科学博物館蔵.標本番号:NSM-M33921
幅 : 4.0 mm


模式標本は黒々とした六角短柱状の結晶の集合体で、そのイメージがものすごく強いんですが、こういう針状結晶の放射状集合体のほうが、この鉱物の特徴をよくあらわしているのだと思います。
その後、メキシコ・ソノラで見つかったのも、まさにこういうタイプでした。
すごい低温低圧で生成しているような雰囲気もあり、猿喰、檜沢のテルルの多い鉱石で、石英塊の晶洞やひび割れに、見慣れない濃い褐色の放射状集合体があったら、分析をかけてもいいと思います。
産状からして、みんなの標本箱に紛れ込んでいてもよさそうな感じです。


このサンプル、一番オイシイ結晶の位置がものすごく嫌なところにあって、どうやっても固定できなくて、泣く泣く別の裂罅に生じたものを無理矢理撮りました。撮影時に動いちゃったのでうまく撮影できていません、雰囲気だけ。
また撮影しなおします。