相変わらず実験室の整備をしています。
今日は、ヘンテコな粘着テープ「ふしぎテープ」でコードを束ねていました。
http://www.nirei.co.jp/personal/fushigi_tape.html
仁礼工業のベストセラーですと、小型結束器「しめしめ」(なんちゅーネーミングだ)が知られていますが、ふしぎテープも使えます。
テープとテープだけはくっつくのですが、それ以外のものにはまったくくっつかないのです。


LAN ケーブルの余剰とか、ホースを束ねるときにはとても便利です。
他も使えるかもしれません。
アンモナイトの雄型と雌型を貼り付けて保管しておくときとか。
ガムテープだと数年するとベタベタになってしまいます。
母岩から外れてしまった日本式双晶の接着時の仮固定とか。


ちょっと前に知ったのですが、このテープ、SM業界ではすごく人気なんだそうです*1
そういう分野では、肌や髪の毛に接着することなく、固定できるのが理想なんだそうで。
私にはよくわかりませんが。


分子間力に対する理解が、さまざまな製品を生み出すというのがいいですね。

*1:そういうジャンルではものすごく高額で売買されるそうです。

EXPACK500 その後

白い悪魔」こと34kgエクスパックを車に積んで、郵便局に行きました。
それにしてもこいつは重いです。
人間は誰でも物を持ち上げるとき、その素性と大きさと形状に見合ったレスポンスを想像します。
こいつはまったく外見からの想像と違った重さなのです。
本を30kg詰めたダンボールを持っても、こんなびっくり感は味わえません。
「なんじゃぁこりゃぁ!?」って感じです。
外部条件に応じた体感温度というものがありますが、体感重量というものがもしあるとすると、こいつはその重量をはるかに超えた値を叩き出すでしょう。
綿5kgと、鉛5kgなら、綿5kgのほうが軽く感じるでしょうね*1


今日の局員も昨日のお姉さんでした。


私「エクスパックなんですけど、とりあえず重さ、計ってみてください」


と窓口に出したのですが・・・


お姉さん「おっ、重ッ(しばらく無言で格闘)」


お姉さん、持ち上げられないんです。どうやっても。
お姉さんは笑顔を装おうとしてはいるのですが、顔が引きつっていました。
なぜこのような邪悪な物体が、自分の担当している時間に窓口に来たのか、不運を呪いながら。


お姉さんの腰痛の原因になるのは私の本意ではないので、私が秤にそっと載せました*2
が、水色の秤の液晶パネルには、重量表示が出てきません。振り切れているみたいです。
郵便局のデジタルの秤は30kgフルレンジで、それ以上の重量は残念ながら表示されないようです。
窓口の内側の液晶パネルをお姉さんがチェックして、やはり『「重量オーバーです」と出てますよ』と言われました。
するとすかさず、お姉さんは局長さんに聞きました。


お姉さん「きょくちょー。エクスパックって、30キロまでですよねぇ?」


局長「うーん。小包だからそうなのかな。そんなに入るかいあの包みに?」


お姉さん「はい。オーバーしてます」


で、局長が後ろの席から出てきました。ボスキャラ登場です。
が、ボスはとても気さくそうな人です。
で、局長としばらく雑談をしていました。
ここは田舎の郵便局。しかも雨降り。お客は私以外誰もいやしません。
局長とちょっとの間談笑して、公正取引委員の不当で高慢な注意や、鉛のレンガの話やら、エクスパックに大量の荷物を詰める秘訣などの話をしました。
局長は、そんなヘンなことを考える人にはいままで遭ったことがない、という感じで、何度も大声をあげて笑ってました。
私、そんなにヘンですかね?
で、巨頭会談の結果、局長のお言葉が、


局長「エクスパックは普通の小包じゃないから、重さを計らないんだよ。そういう話だったら計らなかったことにして送るよ」


とのこと。
いい人じゃん局長。
この世に存在するべきではなかった、最も邪悪な定型小包が、あたたかく受け入れてもらえたのは初めてです(お姉さんは受け入れていないのですがね)。
というわけで、送れるようです。
この郵便局からだけかもしれませんが。
私は、理解のない郵便局員に冷たく配送を断られ、ヤツと一緒に雨の中をとぼとぼ淋しく帰る結果を想像していました。
約款よりも人の情のほうが濃い。そういうことです。


しかし、何とかしてこのエクスパックの重量を計りたいのです。
ヤツがこの世に生まれてきた証をどうしても残してやりたいのです。
・・・どこかに40kgまで計れるいい秤がないかな。


というわけで、「白い悪魔」はまた私が回収して帰ってきました。
何日か一緒に暮らしてたら、なんか愛着が沸いてきました。
あの小柄な体に似合わない、パンチの効いた重量感も、それはそれで嬉しいものです*3

*1:鉛5kgなら手のひらサイズですが、綿5kgなら両手の上腕いっぱいまで使わないと掴めないでしょう。そういう「単位面積あたりで支える重量」の差が効いているのではないかと。

*2:いきなりデジタルの秤に重量物をガツンと載せると、秤のメカが壊れてしまうのです。「秤は化学者の鏡だ」という言葉があるように、秤を壊すのは自分の身が切られるようにつらいのです。

*3:運んでいるときはそんな風には絶対に思うことができないのです。

市販薬品から爆発物製造、容疑で男を逮捕 警視庁

http://www.asahi.com/national/update/0611/TKY200706110269.html


過酸化アセトンの環状三量化したものです。
過酸化物100gって、かなりの量です。
普通、研究で使う過酸化物は、多くて1−2g程度で、それ以上は見たくもないのですが、こんなに作ってどうするんでしょう。
この種の過酸化物爆薬は酸素−酸素結合の結合解離エネルギーの低さのために爆発(爆轟)を起こすのですが、この種の分子は結構簡単にできるものが多くありますからねえ。
酸素−酸素結合を合成で作るには、簡単なのは過酸化水素水(通称:過水)なのですが、これは殺菌剤や漂白剤で大規模に売られているので、取り締まれないのがこの件の背景。
過水が売られている限りこのような事件は後を絶たないのでしょう。
そういうのを作りたい人は大学に入ってアジ化物や過酸化物の研究でもしなさいって。
過酸化アセトンなんて簡単で安定で作っても面白くないでしょ。混ぜりゃできるだけの混ぜ屋の仕事で、合成技術もへったくれもない。作るならポリアジドにしなさいよ。


危険物の本当の怖さをよく知ってて、それを安全に(最小限のリスクで)扱えるのがプロの仕事です。
素人がこういうのを作ろうとすると法に引っかかりますし、プロの指導の下でしないと死にますよ。マジで。
今回、彼が爆死しなかったのは、彼が腕がよかったからでも、合成設備がととのっていたからでもなく、ただ単に運がよかっただけだろうと推測します。


もっとも、この種のものって、禁止されると作りたくなる人が雨後の筍のように出るのですが、「何でも作っていいよ」って言われるとおっかなくて触りたくも無くなるんですけどね。
「何でも作っていいよ」って言われるまでの下積みで、その怖さが理解できるようになるのでしょう。
もっとも、「怖いもの見たさ」といったような好奇心がなければ研究するのはつまらないでしょうし、その辺のバランスが難しいので、彼に「バカなことするな。こういうのは絶対するな」とは私の身上からは言えないのです。
まあ、「他人に迷惑かけるなよ。法律はなるべく遵守しろよ。本気でやりたいなら研究機関に来いよ。」ということで。

琥珀色の・・・

写真はバルト海のコハクの中の虫です。虫の大きさは2mm前後。
Nikon EL-Nikkor 50mm F4 を f = 16 まで絞り込んでます。


コハクは樹液の化石で、生成時に粘度が高かったのか、多くの動物化石を含んでいます。
バルト海のコハクは4000万年前と言われてますから、古第三紀で、恐竜の血は吸ってなさそうです。
化石は私はまったくダメなのですが、コハクの保存状態の良さは、ホントに面白いですね。
タイムスリップした感じで。タイムカプセルと表現される理由がよくわかります。
虫は数千年前、樹液に張り付いて動けなくなったときのそのままの状態です。
「早く嫁さんのところに戻んなくちゃ」とか、「腹減ったなー」とか考えてたかもしれませんね。


コハクで検索していて見つけたのですが、ヤフーオークションのコハクの出品で、

何分、約5000万年前の品のため、ノークレームノーリターンでお願いします。

の説明には笑わせてもらいました。
それを言ったら、石関係のカテゴリーの出品はみんな NCNR になっちゃうってば。