脱水 THF

関東化学の脱水 THF をこの1年ほど使っている。
18リットル7万円ぐらい。
非脱水に比べると5倍ぐらいの値段。高い。


で、自分でベンゾフェノンケチルから蒸留した THF と、関東の脱水溶媒と、
どちらが水がよく抜けているかという議論になる。
腕に自信のある実験者は、自分でケチルから上げた方が乾燥されていると信じて疑わない。
オレもそう思っていた。


で、実験してみた。
二つの同じシュレンクに、同じ量のナフタレンと粉末リチウムを入れ、
片方は関東の脱水 THF を、他方は自分で脱水した THF を同時にシリンジで放り込む。
同じスピードで攪拌して、イオンラジカルの緑色が出てくる時間を計測する。


これで試すと、実はいずれもほとんど同じで、5秒もしないうちに色が付き始める。
見直したぜ。関東化学。5倍高いだけある。
厳密に水分定量しようと思ったら誘電率測定をすればいいのだが、普段使いにはこれで充分という結論に達する。
開けた後の管理次第でどんどん水を吸い始めるので、速く使いきるのが肝要。


分取液クロの THF を自分で蒸留するのもめんどくさいので、Aldrich のものを購入してみた。
使ってびっくり。分取する前より純度が悪い。
こりゃ THF だなということになって濃縮の残りを NMR でチェックしてみると、やはり THF 由来だった。
しょうがないので、脱水溶媒の THF を使ってみた。結果は上々。
20リットルで10万円近い脱水溶媒に缶出しのメタノールを放り込んで eluent を調製するという、神をも恐れぬ行為だ。
しかし、ここで言い訳しておくと、液クロ用の THF も脱水 THF も値段は変わらないんだよね*1


金で買えるものは金で買う。手間も安全も買える。安くはないが。
本当にそんな時代がやってきた。
科学が知識の積み重ねで成り立っているので、それは当然だとしても、オレはこういう風潮は一過性であってほしいと思っている。

*1:「自分で単蒸留しろ」というもっとも適切なツッコミは無しでお願いします。