メノウの特徴


まず、命名がかなりこんがらがっている。
英語では chalcedony と agate という言葉があり、これがそれぞれ日本語で玉髄、メノウに相当しているもののようだ。
このあたりの話はいろいろなところで記述されている。
英語では、非常に細かい結晶質の石英を準鉱物名として chalcedony と呼ぶ人が多く、agate は宝石名のような扱いになっている。
が、たまに、flint, chart, agate をまとめて chalcedony にしている人がいるのでこんがらがる。
そのような点では、agete の方がより成因を規定している点からわかりやすい。


オレは日本の化学の古い呼び名を踏襲し、「メノウ」という言葉になるべく統一するようにしている。本来なら玉髄と呼ぶべきなのだろう。


この種の細かい結晶の石英は、chalcedony, quartzine, moganite, microcrystalline opal などがあり、分類上大変紛らわしい。
成因からではなく、構造組織から命名する手法が提案されている。
メノウの構造上の大きな特徴としては、 (110) 方向に伸びた極めて微細な針状の結晶の集合で、繊維方向に対してねじれているとされている (P. J. Heaney et al., Am. Min., 79, 452 (1994)) 。
また、左右のキラリティをもった繊維が微細なブラジル式双晶で絡み合っているという報告もある (G. Miehe et al., Phys. Chem. Min., 10, 197 (1984))。
そのため、極めて緻密で、強靱な塊になる。
メノウの物理的な特徴の多くは、この、「極めて微細な石英の繊維が、絡まり合って同一方向に並んでいる」ところによるものが大きい。
同じ成分の単結晶である水晶や、非晶質である石英ガラスが割れやすいのとは対照的である。
メノウの大きな塊をハンマーで割るのは容易ではない。
メノウが細工物や乳鉢に向くのは、この物理的特性による。


なお、たまにメノウを「非晶質」と記述している書があるが、これは間違い。
目には見えなくても、結晶でできているのだ。
これは正しくは「潜晶質 cryptocrystalline(形)」という。


「一番大事なものは、目には見えない」ということか。


命名に関しては、以下の論文がよい。
Nomenclature of micro- and non-crystalline silica minerals, based on structure and microstructure, Neues Jahrbuch fuer Mineralogie, Abhandlungen, 163, 19 (1991).
構造に対するレビュー。
Structural characteristics of opaline and microcrystalline silica minerals. Graetsch Heribert, Reviews in Mineralogy, 29, 209 (1994)