バブラー
ファイアストンバブラーの話を二回書いたが、実物を見ないとわからないと思われるので、写真を掲載。
この器具は、国内で製作のノウハウを身につけた A さんの弟子の S さん作。
上に三方コックがついており、下はバブラーになっている。
バブラーの部分にしかけがあり、上部に球面ズリの付いたフロートがはまっており、ガラス管の部分もテーパーズリになっている。
この中にオイルを入れ、一方は反応装置に、一方はアルゴンのボンベに、もう一方は真空ポンプにつなぐ。
系内を真空引きするときはポンプをつなぐとフロートが上がり、弁として作動するので空気やオイルを逆流させずに真空引きができる。
引ききったらアルゴンボンベからアルゴンを流すと、系内がアルゴンで満たされ、大気圧以上になるとフロートが外れ、アルゴンがここから出てくる。
これを使わないで同じ操作をしようと思うと、1m近い水銀柱を立てなければならない。
装置にボンベ直結は、スリ栓が吹っ飛ぶのでかなり怖い。
こんな簡単なガラス器具でも、基本設計が悪いか、今までこの種の器具を作ったことのない職人さんに作らせると、ほとんど使えないものしかできない。
フロートが外れなくてスリ栓が飛ぶか、フロートとガラス管の隙間がだだ漏れでオイルが逆流するか、あるいは系が減圧になっても動作しないか。
S 社のものはフロートではなくガラス円盤が入っているが、ゆっくりと系が減圧になってくる状況ではまったく動作しなかった。
A 社、I 社のものはオイルだだ漏れだった。
ただし、この器具は、酸素や湿気によってあっという間に全滅するような不安定化合物の合成単離用にはなくてはならないものだが、もっと安定なものを扱うときは風船+三方コックで用が足りる。すべては化合物次第。
特殊用途向きなので、作れる職人が少ないということ。
不安定化学種のハンドリングで、信用できるこの器具が使えると、すごく実験が楽になるのは確か。
すべての操作をグローブボックスで、というのは無理な話。