寄宿舎(ドミトリー)効果

世の中には下着フェチなる趣味の方がいるらしく、女性の下着に多大な興味を抱き、窃盗まで犯すこともあるらしいんですが。
これはある種の性フェロモンに誘引される現象なのかしらと、ちょっと調べてみました。
あ、ちなみに私はそういうのないです。中身にしか興味ありません。
だってさ、中身あってこその包装材じゃないですか。パッケージに気合い入れて集めてどうすんのよ。


複数の女性が同居する居住域において、互いの月経周期が同調をはじめる現象がよくあるそうです。
これを寄宿舎効果(ドミトリー効果)と呼びます。月経同調 (menstrual synchrony) とも。
女性に訊くと「うつるよねー」ってみんな言います。
3ヶ月ぐらいで効果が出てくると言われています。
古くから知られていたらしいのですが、最初に検討報告されたのは M. McClintock の研究 (Nature, 229, 244 (1971))が先駆的なものです。
その後、女性の脇から分泌される成分が他の女性の月経周期を変化させる作用があることが報告されました。
分泌物(いわゆるワキガですな)を脱脂綿にしみこませ、別の女性の鼻の下に擦り付け、月経のタイミング変化を調査したのです。
被験者にとってはかなりイヤーンな実験なんですが、有為差が出ました。
最近になって、月経同調については、非常に親しい友達だと有効に働くという研究がイスラエルから報告され、またわけのわからん因子が出てきました。
親子や親しい友人が一緒に暮らすと3−7日の間に月経が揃ってくるのに対し、親しくない仲だとそれほど同調しないという主旨の論文です。
???
まあ、いずれにせよ、そういう月経のタイミングを左右するフェロモンがあるらしいよ、というのは疑う余地がないでしょう。


この成分の構造が気になるところです。構造がきっちりわかって合成までこぎつければ、天然物に頼らずとも実験室で性フェロモンが作り出せますから。
で、いろいろな研究があるのですが、5α-androst-16-en-3-one (5α-androstenone) がその作用を引き起こす物質の一つだ、というところまでこぎつけました。
すでに用途特許取得されておりますが、試薬としてはちょっと高いけど買えます。
5 mg(耳かき10杯ぐらい) 1万円ぐらいですね。


で、例のフェロモン入り香水は、これが入っています。たぶんすごく低濃度なんですが。
月経の同調と、性衝動は全くもって別の話なんですが、業者は「そんなのどうでもいいよ」という感じなのでしょう。
媚薬的な効果が確かめられたわけではありません。
こういうので、月経周期が知らず知らずのうちに狂わされたら、いやですよね。


女囚を多く集めた刑務所で暴動が起こるときは、若い男が(例えば塀の向こうとかに)接近したときに起こりやすいという話が昔からあります。
統計的処理が出来るほど事象が起こるわけではありませんので、推測の域を出ません。
しかし、理性的と思われるヒトも動物であり、様々な外部の化学的な刺激によりコントロールされることもあることは覚えておいた方がいいかもしれませんね。