都茂鉱

島崎先生・小沢先生によって1978年に記載されたビスマスのテルライド、都茂鉱です。
都茂鉱山は島根県のスカルン性の銅鉱山で、古くから息長く、昭和末まで稼行していました。
島崎先生は学士、修士のフィールドとして島根県美濃郡美都町都茂鉱山を研究し、その際にこの鉱物を見出しました。


先生が、スカルンと呼ばれる接触交代鉱床の研究をライフワークとされるきっかけになった鉱山なのだろうと思います。


都茂鉱山の都茂鉱は、単斜輝石−柘榴石−石英系のスカルン鉱石中に、硫テルル蒼鉛鉱、コサラ鉱、輝蒼鉛鉱などの金属硫化鉱物に包まれ、キラキラ輝く銀白色の結晶で出てきます。
2枚目の写真は、石英に埋まっていますが、ちょっと六角板状結晶っぽい外形の一部が見えています。
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都茂鉱(Tsumoite) BiTe, trig., P-3m1.
島根県益田市美都町山本都茂鉱山 都茂鉱床 -60 mL
東京大学総合研究博物館蔵(登録番号 00723)
写真範囲 15 mm
Carl Zeiss Mikrotar 90mm F6.3 (ap. = 6)/Nikon D3


つも2
都茂鉱(Tsumoite) BiTe, trig., P-3m1.
島根県益田市美都町山本都茂鉱山 都茂鉱山旭坑 +25 mL
東京大学総合研究博物館蔵(登録番号 00106)
写真範囲 12 mm
Carl Zeiss Mikrotar 90mm F6.3 (ap. = 6)/Nikon D3


これについては、島崎先生のご著書にその発見譚があります。


石の上にも五十年―一鉱床学者の閑談36話

石の上にも五十年―一鉱床学者の閑談36話

ある日、加藤(昭)さんと一緒に坑内へ入って調査の指導を受け、いつものように午後3時頃坑内から上がって来て、出坑したことを係員に報告するため見張りと称する事務所へ立ち寄った時のことである。坑夫が坑内から珍しい鉱石などを持って上がって来て、ひょいと置いておく棚があるのだが、その上に並べられているいくつかの鉱石をルーペで一渡り眺めていた加藤さんが、これはちょっと変わっている、面白いものかもしれない、といって私に渡してくれた鉱物があった。銀白色の鉱物で、都茂鉱山では時々お目にかかるビスマスを主成分とする鉱物であるらしいことは見てすぐにわかった。都茂でそれまでに産出が知られていたのは、自然ビスマスという Bi の組成をもつ金属ビスマスか、Bi2S3 の組成をもつ輝蒼鉛鉱というビスマスの硫化物の2種であったが、加藤さんはそれらとはちょっと違うのではないか、というのである。


といったきっかけでこの鉱物を見出され、検討された後にこれが新鉱物である、ということをつきとめた話が書かれています。


c軸に垂直方向に層状にビスマスの原子層、テルルの原子層が並んでおり、この方向に完全なへき開があります。
2枚目の写真はそれがわかりやすいかと。


非常に金と相性がよく、外国の標本は自然金と一緒にくっ付いている標本をよく見ます。