高熱隧道

久しぶりに、吉村昭「高熱隧道*1」を読む。


このぐらいのパワーで田上山*2を掘れるといいのにな。
湯飲み茶碗大*3がざっくざっくという感じで。


「零式戦闘機」「戦艦武蔵」も捨てがたいが、やはりこれが
吉村昭のマイベストだと思う。


黒部廊下を歩く人は、お願いすると電気会社の管理する
木蓋のついたトロッコ電車に乗せてもらえたらしい。
20年ぐらい前の話。
「事故が起こっても文句言いません」という誓約書を書かされる
という話だったが、今はどうなのだろうか?


白馬から不帰を通って祖母谷に下りてきたとき、行ってみようと
たくらんだが、あれから15年、未だにチャレンジできていない。


日電歩道*4を歩くと、とてもではないが「アウトドア・ライフ」なんて感じはしない。
人間と自然の闘い合いだ。押されていて負けそうなほど。
山は楽しいけど、怖いところも多い。特に人の来ないところは。
自然は、とてもきれいで、とても実り多く、とても怖いものだ。
このへんの、自然への畏怖と憧憬を、子供にうまく感じ取らせてあげたい。
人が自然に負けそうなほどの環境がそばにほしい。


ちなみに祖母谷では、温泉のほとりで大量の alunogen を見つけた。
白い絹糸状結晶集合体がいい感じ。
不帰も hedenbergite が出ているところがあるのだが、だれも
こんな所までこないよなあ(その手間で黒岳*5に行くだろう)。

*1:黒部の山奥におけるトンネル掘りの話で、戦争中の実話をもとに吉村昭が小説にした。岩盤温度165Cの岩を穿ちながら、雪崩などの自然との格闘が読み所

*2:日本三大鉱物産地の一つで、大きな smoky quartz と topaz が有名

*3:湯飲み茶碗と言ったら、明治期の topaz のサイズの形容です

*4:日本電力が戦時中に欅平から阿曽原まで作った徒歩道。平均斜度70度の岸壁の中腹をコの字に穿った強引な道で、とんでもないルート

*5:北アでもっとも標高の高い鉱物産地。昔は水晶を一斗缶に詰めて下ろしたらしい。どのルートを通っても下界から往復3日はかかる場所。