結晶構造解析のノウハウ

送られてきたリガクジャーナルに、城さんによる回折データ収集のノウハウがあったので、一部引用(リガクジャーナル、36、48 (2005))。
オンラインでも読めるが、会員登録しないとダメなのでリンクではなく引用。
今更と言わずに、もう一度よく読んで欲しい。
2500の数の困難な結晶構造解析をこなした城さんのコメントなので。

  1. あまり大きな結晶を使わないこと。大きい結晶では金属原子による吸収や双晶の問題が避け難い。顕微鏡下で双晶を含まない部分を採取すること。X線源が回転対陰極の場合で 0.1 mm 角程度、封入管で 0.2 から 0.3 mm 角程度の大きさが適当である。
  2. 結晶をカットすると歪が入りやすいので溶媒を使える場合、外側から少しずつ溶かして適当な大きさにする。
  3. −180°程度の低温で測定する。試料を低温にすることで2θ高角域の反射精度が改善され、位相問題の解決、構造精密化の精度向上に繋がる。
  4. イメージングプレートを用いる場合は、2θ高角域の反射が良好な S/N 比を持つように露光時間を設定する。そうすれば、低角度側でも飽和することなく測定できる。また、振動角を小さくすることも重要。
  5. ループを使って結晶を測定する。ループで溶媒から結晶をすくい取り、すぐに流動パラフィンで覆い、さらに低温にすれば、安定性も良く、良質の結晶を短時間で採取できる。


 最後にユーザーへのアドバイスを求めた。現在では回折データをほぼ自動的に測定でき、直接法の選択肢も増え、構造解析の結果も得られやすくなっている。そうは言っても複雑で難しい化合物が増えており、経験の少ない方々がいきなり難しい化合物の構造を解くのは大変である。易しい構造は自動で解析できるが、易しいものを自分で解析して経験を積むことが大切と思われる。ユーザーに対して解析のお手伝いをすることも多々あるが、ノウハウを積極的に聞き出し、直感を磨いていただきたいとのことであった。