荒川鉱山の紫水晶

これは古典標本だけど、頑張れば今でも採集可能かも。
荒川鉱山の紫水晶の群晶と単結晶。
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紫水晶 (amethyst) SiO2, trig., P3121
秋田県大仙市協和町 荒川鉱山
東京大学総合研究博物館蔵 (登録番号 40589)
標本長: 11.5 cm
Nikon Zoom Micro Nikkor 70-180mm/Nikon D3
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紫水晶 (amethyst) SiO2, trig., P3121
秋田県大仙市協和町 荒川鉱山 嗽沢二部
東京大学総合研究博物館蔵 (登録番号 40254)
左の結晶: 4.2 cm
Nikon Zoom Micro Nikkor 70-180mm/Nikon D3
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荒川鉱山は秋田県の中央あたりにある、古い古い銅の鉱山。
熱水性の脈で、チャンピオンベインは500m以上の長さがあり、延長部は不毛石英脈に変わってしまうのだけど、空隙に水晶がこれでもかというぐらい多産する。一部は、採石場(荒川砕石)の端っこまで延びていて、この間までいくらでも水晶が採れた。今は露頭を埋めてしまった。
明治期−大正期に黄銅鉱を主鉱石鉱物として三菱が掘った経緯がある。
ここの鉱脈に産する特殊な形状をした黄銅鉱「三角銅」は、世界中の研究者およびコレクターの耳目を集めた。
大昔、瀧本先生が「大地震の時は針状三角黄銅鉱を持って逃げる」とおっしゃったらしい。そのぐらいここの黄銅鉱の結晶の形は特異的で、かつ大きく美麗だった。
三菱の関係者でもあった若林弥一郎先生が、かつて地質学雑誌に荒川鉱山の産出鉱物の記載をしている。
三菱が鉱夫をいじめにいじめ抜いた話は有名。
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ここでは、いろいろな水晶が採れる。
無色の水晶は、大きなところでは畳20畳敷きぐらいの広さのガマがあり、天井いっぱいに水晶が生えていたりする。これは今でもある。
quartz vug
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緑泥石(シャモス石)を含んだ緑色の水晶もある。
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鉱脈の一部、あるいは平行脈などに、美麗な紫水晶が混じっていることがある。
およそのものは色が薄いんだけど、時折、非常に色の濃いものがあったようだ。
特に東大のものは色が濃い。こんな濃いものがあるとは。
東大は、若林標本を多く所有している。
日本の古典3大鉱物標本(和田標本、若林標本、高標本)の一つで、大きさは高標本ほどでは無いにせよ、選びに選び抜いた、美しい結晶が多い。
和田標本の大部分は三菱に移管されているが、若林標本は、東大の収蔵物の重要な位置を占める。


(追記)
上の二つは百年も前に出た標本。念のため。
今の嗽沢坑に潜るべからず。死ぬよ。
一抱えもある石が、10mも上から音も無くバッサリ降ってくるようなところだから。
オレだってあそこは入る気がしない。
百目石坑は観光坑道化されていたが、上からあまりにも多くの石が降ってきて、安全確保ができないので、とうとうやめてしまった。
上から銅鉱石が降ってくるので、それを拾うのは面白かったのだけれど。