Grignard 反応で暴走。

エーテル中で Grignard 試薬を調整し、こいつと基質を混ぜてみたがまったく反応せず、
「こいつあエーテルがわりいんだな」
ということで、THF をちょいと足したら反応が暴走し、混合物がジムロートからしゅばしゅば吹き出した。


どうやら、Grignard 試薬の配位子交換で熱がでて、この熱で反応が加速し、さらに求核性の上がった Grignard 試薬が一気に反応したものらしい。


おっかね。


最初っから THF でやりゃあいいんだけどね。
エーテルは低沸点なので反応中は温度が上げられないけど、そのまま分液が振れるし、溶媒を飛ばすのも楽なんだが、使い分けは重要だ。


カルバニオンには多いんだけど、溶媒和されてないもの、溶媒が1分子付いているもの、2分子付いているもの、3分子付いているものでまったく反応性が違うことがある。生成物が違うこともある。
どうやってコントロールするかっていうと、やっぱり1回完全に溶媒をぶっ飛ばすしかない。
それで規定量+無配位の溶媒で薄めることになる。


で、溶媒をぶっ飛ばすと、これが空気中であっという間に発火するんだ。
おっかね。



最近あった事故 part 2。
誘導期*1の後に、やはり激しい反応がいきなり「ガツン」ときて、瞬時に暴走。
滴下ロートのスリ栓がすっ飛んだ。
滴下ロートの圧平衡の側管を溶液が「ズゴゴゴゴ」とみるみるうちに上がってきて、滴下ロート内で混ざり、滴下ロート内でも反応暴走。
掃除がたいへん。


反応の激しすぎるものは、滴下ロートすらおっかない。
シリンジで少量ずつ入れるしかない。
空気中で発火炎上しちゃうものだと、吹いても滴下ロートが外せないし。
こういうときは、圧平衡の側管に二方コックが付いている滴下ロートがいいんだけどさ。あんまりこれ、売ってないんだよね。


というわけで、わかる人しかわからないネタになってしまいましたが、特に意図したわけではありません。
わかる人は、他山の石としてくだされ。


初めて作る化合物、初めてヤる反応は、すべてが予定調和ってわけにゃいかんのです。

*1:反応までのタイムラグのこと。これが長いと、調子に乗ってガッツリ混ぜ、あとでたいへん困ることになることが多い。誘導期の長い反応はホントに怖い