茶屋川−花石(珍古部)−美利河鉱山跡−種川鉱山跡−今金−鵜泊海岸

今日のメインはメノウです。
知られているかどうか判らないのですが、北海道のメノウは国内で最も美しいと言われます。
北海道のメノウと言えば、花石なのです。
この地名は、昭和初期ぐらいまで「珍古部(ちんこべ)」と言ったのですが、名前が下品*1だということで、花石になってしまいました。
姥捨(長野)もそうなのですが、地名を変えるってのはあまり好きではありません。
そんなこと言ったらさ「保土ヶ谷*2だってそうじゃんか。保土ヶ谷も変えろよ。
って、いきどおってもしょうがないんですが、とにかくちんこべです。
ここは最近の情報がほとんど流れてきませんが、まあまったく無いということは無いだろうと考え、車を走らせます。
古い情報では、茶屋川滝ノ沢、大曲、珍古部川上流が有名なんだそうです。
これらを総称して、「花石メノウ」と言います。
地元の人に声を掛けてみると、「大規模に掘り返すのは道がうるさいが、いくつか拾う分にはかまわないんじゃないか」とのこと。
そうこなくっちゃ。
とりあえずぐるぐる回って、沢を上がり藪を漕ぎ、メノウを探します。
が、沢の泥や砂にはクマの足跡がいっぱい。
大きなものでは足跡の幅が15cm近いものがあります。
サイズから考えれば、4−5歳ぐらいのヒグマでしょう。体重200キロ前後でしょうか。
こんなのに襲われたら、いくら熊避けスプレーがあっても命の補償はありません。
カウンターアソールト(熊避けの唐辛子スプレー)の安全ピンを外し、いつでも応対できる状態で沢を探します。
沢にはメノウが多く転がってます。
20cmサイズはざらです。縞模様が多いのも。
いろいろ歩き回って判ったのですが、沢によってメノウの色合いが違います。
珍古部のメノウは、集塊岩−凝灰岩に入り込んだメノウ脈で、この時点では無色なのです。
これが風化し、分離したメノウが鉄分を多く含んだ土壌に埋まり、長い時間(おそらく数万年単位でしょう)かけて土壌中の鉄分を吸い取ると、赤い縞瑪瑙になるもののようです。
細工物では、これを灰に埋めて炉に入れ、熱処理をして鉄イオンの酸化状態を替え(おそらく水酸化鉄→酸化鉄への変化)、赤みを強めます。
この熱処理により色が鮮やかになり、加工性が上がるのだそうです。
ただし、温度が低ければ効き目が少なく、高すぎると脆くなったり色が黒ずんだりと、やはりこれも職人芸の世界のようです。


いろいろ探した末、ピンポイントで大量のオレンジ色のメノウがある場所を見つけました。
すげーいっぱいあります。大きなものでは30cmぐらいのものも。
縞々がきれいなものは10個に一つぐらいなのですが。

こんなのを土嚢袋5個分ぐらいかき集め、沢でじっくり歯ブラシで洗浄し、一級品だけ拾ってまた沢に戻します。
それにしてもクマのにおいがプンプンです。
動物園のにおいですよ。
いつ出てくるんじゃないかと、けっこうビクビクものです。
クマは鼻が良く、人のにおいを嗅ぐと山に潜って出てこないと言われますが、クマの体臭のほうが人より100倍きついです。断言できます。
ここはクマの嫌いな人には絶対に近寄れません。


↓クマのにおいのプンプンするこの森に一人で入っていける度胸と無鉄砲さがないと、ここはつらいです。


id:lithos さんの HP にとてもきれいな写真があるのですが、
http://www.lithos-graphics.com/rocks/asia/Japan.html
ブルームというらしい(知りませんでした)苔のような花のような組織が多く入っているものがあります。
花石という地名は、ここから取ったのでしょう。ちんこべのほうがいいけど。
ある沢には、一抱えもある緑色の苔入りメノウ(モス・アゲートというのでしょうか)が転がっていました。
これはでか過ぎるので放置。


しばらく歩き回って疲れたので、場所を変えます。
傍にピリカダムというダムがあり、このダムの脇に美利河鉱山という昔マンガンを掘った跡があります。
そこまで行ってみます。ここは以前ラムスデル鉱が出たそうです。
が、露天掘り跡は完全な藪。とてもではありませんが採集になりません。
ユンボでもないと。
残念ですが諦めます。もう一つ鉱床に回ってみましたが、似たようなものです。



ちょっと離れたところに、種川金山があります。
肉眼金もあり、紫水晶も出たらしいのですが、道が悪く泥だらけの林道で、しかも熊笹の林。
子一時間探しましたが、鉱山跡を見出すことができませんでした。
やはり北海道の林道はバイクの方がいいですね。


下には打ち捨てられたサイロがあります。


今金のセイコーマートにはこのおにぎりがあります。

実はラベルはインクジェットプリンター印刷です。
このほぐししゃけおにぎりがおいしくて大きかったので、今後見つけたら買おうとかたく心に誓ったのですが、結局ここで見かけたものしかありませんでした。


すごくアメリカの町並みっぽい今金の街中を抜け、海岸に出てペグマタイトを探します。
が、目的地に付くと漁協の監視員がいて、海岸の転石を見せてくれません。
目的地の露頭(というか岩礁)はアワビとウニの漁場で、密漁にピリピリしているのです。
しょうがないので、監視員と一緒にペグマタイトを探します。
ですが、どうやら本当に海から突き出た岩礁が目的の脈らしく、そこに泳いで渡る許可はついに下りませんでした。
監視員のばか。


しょうがないので、もうちょっと南の鉱化帯をちょこっと周ったところで日が暮れ、今日の活動は終わりです。


江刺の町は祭りです。
脇道に入り、未舗装道を5kmも走ると、一軒だけ湯屋があります。
臼別温泉です。
臼別温泉で汗を流し、おばさんに裸を見られながら砂金掘りの話を地元衆と談笑します。
この沢でも砂金が出るらしいのですが、砂金を掘る道具を用意しなかったので今回は見送りです。
この温泉は、傍の鉱山がやっていた頃は住友金属鉱山が管理していたのですが、廃山と共に地元に寄贈し、町がお金を出して温泉の建物を作ったのだそうです。
しかしいい温泉だこと。
ただし、ケツを見せながら体を洗うと、ウシアブにぐっさりと刺されます。

*1:アイヌ語で男性器のことを「チポ」といいます。「ちんこ」「ちんちん」「ちんぽ」というのはアイヌ語が語源なのでしょう。

*2:「ほと」は女性器の古名