注射針の先
あるところで、注射針の角度指定という話になり、45度で切り落とすというネタがあったんです。
えー?45度?それじゃセプタムに刺さらないって。
私「注射針の角度は医療用で12度よ。それじゃ、注射針の先のファセットが取りづらいでしょ?」
しかし、聞いても誰もそれを知りません。
では少し、情報をリークしましょう。極秘情報ですぜ。
百聞は一見にしかず。これが現行の標準の医療用注射針(T社製)の先端です。
今、これはランセットポイントという研磨が主流です。レギュラーベベルと言われます。
ただ斜めに切り落としているだけじゃないのがおわかりいただけますか?
針先を斜めに研磨したファセットのことが、ベベル。
ただ単純な斜め切り落としは、フラットベベル。
これをさらに角度を変えて研磨し、先端を鋭く切りなおしたのが、ランセットポイントです。
ランセットはメスの刃。ポイントは先端部のこと。
T社は基本的にランセットです。
フラットベベルは先端部が丸く、尖ってないため刺すのに力を要し、当然痛みを生じるので、もう二回ファセットしなおして、先端を尖らせるのです。
横から見ると、再研磨の角度関係がはっきりします。
数年前までは潤滑剤として、シリコーンオイルが塗布してあったので、するっと皮膚を通ったのですが、規制により使用できなくなり、以前より注射の痛みが増していると思います。
この針は、カテラン針という長めの針です。長さ6.5cm7cm。
化学の実験室ではこの長さが一番使いやすいのですが、もともとは医療用です。
お尻に注射を打つとき、しばしば女性のお尻では脂肪が厚くて長さが足りず、このぐらいの長めの針を用いるのだそうです。
女性の平均臀部脂肪の厚さって、4cm近くあるらしいのね。知らんかった。
ランセットポイントカットは、使い捨てならいいんですが、何度も使うと先が丸くなり、刺しづらくなります。
理化学実験用ではこのタイプ。
バックカットポイントと言います。
先端部の刃が鈍らないように、ポイントを横側ちょっと後から研磨してあります。
痛みが生じてもいいタイプです。
液クロものだと、針先をわずかに曲げた、ベンドディップというタイプがあります。
すべては、利便性のため。
人に対する痛みが少なく刺せたり、あるいは耐久性を持たせるための工夫です。
これ、非常に細かい話なんですが、知らないと損をします。
肝心要なものや、本当にきめ細かい気配りって、さりげなさすぎて目には見えないものです。
なお、痛くない注射の打ち方については、以前の調査報告を参考のこと。
http://d.hatena.ne.jp/doublet/20051201#p1
(メモ)撮影レンズはすべて Zeiss Luminar 40mm Green Dot。三枚玉とは思えない写りと抜けの良さ。